第16話

 大会初日。真由美は5位入賞をはたした。

帰り道。応援に来てくれたクラスメート達は1年で5位入賞なんて凄いと大騒ぎしていた。

「真由美って本当に速いんだね。びっくりしたよ」

「1年で入賞なんてすごいねぇ」

「ねぇお祝いパーティしない」

真由美本人は苦笑いしながら

「一応中学では結果出してきたから。でもパーティとかはまだ明日大会2日目あるしね」

確かに、客観的に見れば1年のこの時期で地区予選とはいえ5位なら立派な結果だろう。周りが騒ぐのは理解できるので無碍にはしないでいるようだ。そこで

「悪い、真由美ちょっと明日の準備したいんで手伝って」

「うん?ケイいいよ。家?」

「そ、ちょっと家で手伝って」

「と言うわけなんで、みんなごめんね。明日はケイと兄貴が走るから応援よろしくね。ケイ行こう」

「えー、ちょっとくらいいいじゃん」

「ごめんよ。大会中だし、早く休んで明日に備えたいので準備も早めにしたいんだ」

「まぁオレは少し余裕があるから、オレはみんなに付き合うからオレ独りだけでがまんしてくれよ」

雄二がみんなをなだめてくれた。







「ケイ」

「ん?」

「明日の準備なんてウソでしょ?」

「いや、今思いだした。昨日寝る前に準備したんで忘れてたよ」

「ウソばっかり。でも、ありがと」

真由美は抱きつくように腕を絡めてきた。



「ちょっと寄り道するか」

通り道の小さな公園に足を向けた。




「ここも久しぶりだなぁ」

「小5くらいまでだっけ、ここで遊んでたのは」

「男も女も無い感じでふざけあってたよなぁ」

「ふふ、ケイはいっつも木に登ってたね」

「俺の次に高いとこまで登ってきてたのは真由美だったもんなぁ。いつだったかは高いとこまで登りすぎて降りられなくなって……」

「あはは、で、ケイが一生懸命誘導しておろしてくれたんだよね」

「そうそう、で下まで降りたら涙目でオレに抱きついてきたんだよな」

「あの時はケイが救世主に見えたもの」

「そういえばあのときが最初かな?真由美がオレに抱きつくようになったの」

「そうね、ケイに抱きついていれば何でも大丈夫って思えるようになって……いつの間にか、いつでも抱きつくようになってたのよね」

「で、いつのまにかオレからも抱きつくようになってたなぁ」

真由美をそっと抱き寄せ

「まぁ今は抱き寄せる意味もちょっと変わってきたけどな」

真由美も体を寄せてきながら

「うん、前は安心するってだけだったけど、今は幸せを感じるの」

見つめあい、そっと唇を寄せ、幸せな時間をすごした

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