第132話

「真由美ちゃん、やっほ」

「さっちゃん、いらっしゃーい」

「ケイ君も雄二君も今日からお昼一緒よろしくねぇ」

「おぉ幸枝よろぉ」

「あぁ。さっちゃん、いらっさい」

「んで、うしろのお二人さんが、いつも幸枝が一緒にお昼食べてる子?」

「うん、この茶髪の子が山本淑恵。見た目より純情だから手加減してあげてね。で、こっちの黒髪の子が神尾美羽」

「オレは伊藤景よろしく」

「僕は森川雄二。よろしくね」

「あたし森川真由美。よろしくねぇ」

山本さんと神尾さんが微妙な顔をして幸枝がちょっと困った顔をしたところで、オレはふっと笑って

「でも、こんな自己紹介じゃこれから友達になろうって言っても話も始まらないよね」

真由美も当然

「そうよね」

雄二だって

「そりゃそうだ」

と二人揃ってにっこり

「まぁとりあえずすわってよ。食べながら話そう」

机をくっつけて弁当を食べながら自己紹介やりなおし

「ふたりがオレ達の事どのくらい知ってるかは分からないけど、自己紹介やりなおし。オレは伊藤景、陸上部所属で中学時代から中距離800mを専門に走ってます。軽音部に掛け持ちで所属してギターの練習しながら、たまにKKシーズンの先輩たちに混ざって歌う事もあるね。これからはステージに出る事もあるかな。応援してくれると嬉しいかも。趣味は読書。本なら純文学からミステリー、SF、エッセイ、ノンフィクション、ラノベ、ハーレクインみたいな恋愛物、百科事典までなんでも読む濫読家です。他に特技ってんじゃないけど料理するのが好きですね。味の方は、まぁなんなら幸枝にでも聞いてみて。それと真由美って彼女持ちなんでそこは覚えておいてね」

そう言って真由美を抱き寄せて頬にキスをした。

キャァという黄色い悲鳴が上がったけれど、まぁそのあたりも目的なのでオーケー。そんな中周りの反応に疑問を感じたのか山本さんが

「あれ。こんなとこで彼女を抱き寄せてほっぺにとは言えキスした人がいるのに周りの反応が薄い。それに彼女の目の前でさっちの事、名前で呼び捨て?」

それには幸枝が答えて

「ケイ君と真由美ちゃんについては、そのあたり平常運転ですから。クラスの中では当たり前の風景なんでしょう。私の名前呼びは陸上部の合宿中に私からお願いしたんですよ。でも、ケイ君いつも言ってますよね。抱きあうくらいならともかくキスまでしちゃうって私の前でそれは結構な勢いでデリカシー無いですよって」

「「ごめん、つい」」

そこに神尾さんが、おずおずと

「伊藤君はさっちの気持ちは」

「もちろん知ってくれてますよ。何度も告白してますし」

「何度もって。伊藤君さっちの気持ちを軽く考えてたりは」

あ、さすがにこれは話って入ったほうが

「幸枝の気持ちは分かっているつもりだよ。でもね、オレの彼女の席はひとつだけ。そこには真由美がいるからさ。最近の文化祭をおひとりさまで過ごしたくないからってだけの軽い告白と違って、本気の告白をお断りするのは、オレだって結構つらいんだぞ」

「でも、そばに居るのはゆるすんだ」

「そりゃ、あれだけの気持ちをぶつけられれば、そこまで邪険には出来ないし。なによりもう大切な友達だからね」

いつの間にか横に並んでいる幸枝の頭を撫でる。嬉しそうに目を細める幸枝との様子に。

「「あんたら本当に付き合ってないの?」」

きょとんとするオレ達3人の様子をみて

「ねぇねぇ、ミュウあたし達の感覚がおかしいの?普通にあたまナデナデしてるのにつきあってないとか、それを彼女が平気で見てるとか」

「エーちゃん私にだって分らないわよ。ねぇ、あなた達の付き合ってる付き合ってないの違いってなんなの」

「「「そりゃ一番は気持ち。付き合ってる彼女彼氏だって気持ちが一番大事」」」

「そ、そりゃ分るよ。でもさ、そのスキンシップ的な?」

そこに真由美が答える

「あんまり気にしないかなぁ。ケイがあたしのことを一番に大事に想ってくれていること分ってるし。さすがに最後の一線超えるとかされたら切れるかもだけど。ね、さっちゃん」

「あはは、大丈夫大丈夫。私も命は惜しい。真由美ちゃんより先ってのはないから」

「「あとならいいわけ?」」

「そこは、ほら言葉のあやっていうか。ね、そういう細かいとこはいいでしょ。本当にリアルに命惜しいから」

そろそろ真由美か雄二に振らないとキリがないな

「まぁオレはそんな感じ?」


「そ、それで、そのケイの彼女の森川真由美でっす。双子の兄貴と一緒に居るので真由美って呼んでね。あ、ケイに色目使うなら命賭けてもらうので、そのへんよろしく。それでケイと同じで陸上部所属で中学から短距離200mを専門で走ってます。こう見えて中学時代は県2位まで行ったんですよ。それとあたしも軽音部、あれ?仮入部のままな気がしてきた。ねぇケイあたしって軽音部でどういう扱いになってる?」

「それな、オレも気になってたんだけど、KKシーズンのサブメンバーまでなっちゃってるから今更だけど仮のままなんじゃね?こんど神無月先輩と話しとけよ」

「あーい。まぁそんなわけで軽音部にも顔出してます。趣味は映画鑑賞かな。あと目標としてケイに恥しくないお弁当を作ってあげたいって思ってます」

「ねぇ、えーと、真由美さんKKシーズンの名前がサラッと出てきてるんだけど」

「ゴールデンウィークにケイがKKシーズンのミニライブに引っ張り出されて、そのあと色々あって、あたしもいつのまにかって感じね。でも今はどっちかっていうとケイとさっちゃんと3人でやりたいねって言ってるのよ」

このあたりで雄二にふらないとキリがなくなりそう。

「で、こいつが森川雄二」

「うん、森川雄二です。真由美の双子の兄妹で、ケイとは幼馴染です。真由美とまぎらわしいので雄二って呼んで下さい。同じく陸上部で中学から長距離やってます。今は5000mが専門です。趣味は音楽鑑賞です。最近はレゲェに興味ありですね。あ、僕も彼女いるのでそっちはごめんなさいです」

「雄二さぁ、もう少しなんとかならんの?おまえのいいところをオレ達は知ってるし、信頼してる、親友だと思ってる。でもさ、その親友が誤解されるのはちょっと寂しいんだけど」

「で、僕にどうしろと?」

「いや、まぁ。うん、わかった。こいつって最初はとっつきにくいけど、穏やかで優しい奴なんで長い目でみてやって。あ、でも雄二の彼女はオレの妹なんで略奪は無しの方向でよろしく」

お、ふたりとも吹き出してる。よし掴みはオーケーだな。

「で、ふたりは山本さんと神尾さんだっけ」

「はーいはい。神尾美羽です。仲の良い友達からはミューって呼ばれてます。バスケット部でポジションはシューティングガード。まだレギュラーにはなれてませんがベンチ入りはしています。次の試合くらいには先発に選ばれるように頑張ってるんですよ。あ、球技大会でのみなさんのプレイにはびっくりしました。さっちは中学時代にバスケやってたのでまだわかるんですけど、3人はそうじゃないですよね」

「オレと雄二はバスケは全然やってないし、真由美も中1の秋くらいまでやっただけだよな」

「それでも雄二さんも伊藤さんもバスケ部レギュラーと普通にマッチアップしてましたよね。真由美さんはマッチアップじゃなく足で突破してましたけど。」

「球技大会のことなんてよく覚えてるね」

「そりゃ、バスケ部の活躍の場をあっさり奪っていった4人ですからねぇ。4人と対等にやれたのはバスケ部のエースだけってちょっとショックでしたし。なんですか4人ともダンク出来るとか、あの見事なタップシュートとか伊藤君は1度アリウープまで決めかけてましたよね」

「ミューいきなり熱くならないで。3人が引いて……あれ?引いてない?」

そんな山本さんにクスクス笑いながら幸枝が

「この3人は、夢中になってる人に引くなんてことはないですよ。一生懸命な人をけなしたりする人たちじゃないですから。でもミュー、先にエーちゃんの自己紹介にしましょう」

「えと、山本淑恵です。さっちとミューふたりとはバスケ繋がりで中学時代に知り合って以来の友達です。バスケ部でポジションはセンターです。まだ先発にはなれてませんけど、何回か試合には出ました。今度の日曜日に練習試合あるんで、時間あったら応援に来てもらえると嬉しいです。伊藤君や雄二さんが応援に来てくれると女子バスメンバーみんなヤル気がアップ間違い無いので。趣味は読書です。最近は特に感動系の恋愛物を読んでます」

お、読書が趣味なんだ。なら聞いて見るか

「山本さんは読書が趣味なんだ。最近読んだのでお気に入りとかある?」

「そうですね、最近だと余命半年ですかね」

「お、良いチョイスだね。あれ泣けるよね」

「え、伊藤君も読んだんですか」

「うん、Web小説発らしいけど、本屋で見かけてちょっと読んだら引き込まれてね」

「普通は男女どちらかが病気で先に死んでって話ですけど、ふたりともがって中々ないですよね。それでいてふたりともが幸せになれるって切なくて、何度読んでも泣いちゃいます」

盛り上がっていたら

「ね、ケイ。その本いつ読んだの」

あ、真由美がちょっと拗ねてる。

「昨日、帰ってから本屋に行ったら見つけたんだよ。真由美も読んで見るか?」

「う、うん。ふたりがそんなに盛り上がれるような本。読んで見たい」

「おう、じゃぁ今日帰りに家に来いよ。貸してやるからさ。あ、ん~。いや、やっぱり家で読んでいけよ」

そんな話をしていると幸枝が

「まったく、今まで雑談していたのに本当にナチュラルにデートの話になるんですから。ね、ミューもエーちゃんもこのふたりはこれが平常運転ですからね」

こんな雑談をしながら弁当を食べて

「んじゃ、初回から悪いけど、オレ達は陸上部のバトンパスの練習があるからここまでで失礼するね」


「仲間が広がるのはいいなぁ」

「んだね」

「でもケイ」

「ん、なんだ」

「ケイってさ、初対面の女の子とナチュラルに話せるじゃない」

「そうか?普通だろ」

「ケイ、お前の普通はちょっと普通じゃないからな」

「え、雄二まで」

「まぁそのおかげでお通夜にならないから助かるけどな」

「でもね、勘違いさせないように気をつけてね。あたしとしてはそれだけが心配かな」

「なんかわからんけど、気を付けるよ」



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更新遅くなり申し訳ありません。

苦手な日常パートに新キャラで書くのに時間掛かっちゃいました。

カクコン5応募したのでランキングからも消えてます。

とりあえず頑張りますのでよろしくお願いします

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