第38話

「本年度校内球技大会の開会を宣言します」

球技大会実行委員長の開会宣言があり球技大会が始まった。

1回戦はオレはソフトボール、雄二はバレーボール、真由美はバスケットボールに出場し、特にこれといったことなく勝ち進んだ。

2回戦、オレも雄二もバレーボールコートにいた。

「じゃぁ、エースに森川、エース対角に野末、セッターはオレ、オポジットに伊藤・・・」

バレーチームのリーダーの村上がポジションの確認をしつつ

「ケイ本当におまえオポジットで良いのか?」

「良いんだよ。1発2発ならともかく常時あいつらと競り合うのはさすがにな・・・。ノーマルに勝てるならそれが一番だし。まぁ本当にやばそうになったらオレにも振ってくれ。多少は流れを変えられるだろ」

序盤は順調に得点を重ね1セット目を先取し

「よーし、このままいこうぜ」

村上の声掛けにチームも乗る。

が、2セット目は相手チームも必死だった。メンバーチェンジで入れたのは、どうやら中学でのバレー経験者らしくこちらの攻撃をことごとくシャットアウトしてきた。攻撃こそあまり得意では無い様だったがこちらの得点チャンスをきっちりと潰してきたため、2セット目を僅差で取られた。

「あぁ、むこうの後から入ったメンバー経験者だな。ただ、レギュラークラスじゃないみたいだからちょっと振ってやればどうにかなりそうかな」

オレが言うと、村上が

「振るって、どうすんだよ」

「まぁ、常道は左右の揺さぶりなんだけど・・・。村上さぁ、フェイント振って右に上げる振りして左にトス上げられる?それかだれかクイック飛べる?」

「「「「無理ムリムリ」」」」

村上はじめメンバー全員が手で×を出す。

「だよねぇ。じゃぁ仕方ない。第3セットの1発目オレに上げて。バックアタックで目先を変えよう。あとは2アタック絡めて行こう」

「バックアタック出来るのか?」

「ん~、まぁ出来るように見えるくらいには・・・」

初心者セッターのトスにオレのバックアタックだからはったりで目先を変えるくらいにしか使えないのは言わない。とりあえず相手を混乱させて1セット取る間くらいは効果あるだろう。

「そうそう、オレがバックアタックするとき雄二も一応フェイントで飛んでくれよ」

そんな打ち合わせをしていると村上が

「ところでバックアタックへのトスってどこに上げるんだ?」

「えぇとだな、アタックラインとネットの中間くらいに上げてくれればオレが合わせるよ。本職のバックアタックだと低めに上げるらしいけど、さすがにそれやられるとオレだとあわせられないから、むしろちょい高めでよろしく」

「OK。行こう」



「1Bファイトー」

「みんな応援してるよー」

試合の間隔があいたらしい女子が応援に来てくれて

「おぉ、やるぞー」

と気合が入るのを見て。

「あはは、おまえら素直か」

と生暖かい目で見ているところに

「ケーイがんばれぇ」

真由美の応援の声が聞こえた。

「おぅ見てろよ」

返事を返してポジションについた。

さて1発目が大事だ。これが決まれば相手に必要以上に警戒させることができる。

相手のサーブから、雄二が助走を始め、ほんの僅かに遅らせてオレも助走からトスが上がりバックアタック。よしナイスまぐれ。雄二に釣られたブロックの横を通したバックアタックが相手のコート右奥に落ちた。

「よっしゃぁ」

チーム内でハイタッチを交わす。相手チームを見ると、浮き足立った感じがある。

よし、これでオレは囮で十分だな。

そこからはオレは飛ぶフリだけで相手に立ち直る隙を与えずに一気に試合を決め学年決勝に駒を進めた。




「ケーイ、なんであのあと攻撃に参加しなかったのさ」

真由美が少々不満気だ。

「オレのは奇襲攻撃みたいなもんだからな。普通に勝てるならそのほうが良いんだよ」

真由美の頭を撫でながら予定通りにいった試合を振り返る。

「まぁあれで相手に現役バレー部レギュラーとかいたらやり方変えなきゃだったけどね。あのくらいの相手なら最初のバックアタックが成功した時点で決まりだよ。それより真由美は次の試合は?」

オレは次のソフトボールまで1時間弱あるので聞いて見た。

「うん、次はバスケ。あっちのコートであと5分くらいかな」

「お、少し時間あるから応援にいくよ」

真由美のふにゃっとした笑顔で癒されながら手をつないでコートまで送っていった

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