第37話

「どうするかなぁ」

「ケイは全種目じゃないの?」

「ブッキングしたらどうすんだよ。真由美は全種目に登録してるみたいだけど大丈夫か、そのあたり?」

「あたしは良いの。このクラス運動部の女子多いから、ブッキングしたら代わりいるから。あと兄貴も1種目とか無いと思うんだけど」

「そうそう、雄二が1種目は無いだろ。オレと違って上背あるんだからバスケとバレーは出ろよ」

「そう言いながら、身長20cmも違うケイにスパイクをブロックされる気持ちって分かる?それに、バスケだってケイのほとんどダンクになりそうなシュートとか対戦相手からしたら悪夢だからね」

「オレの高さは飛んでる間だけだし。体重もないからコンタクトで押し負けるし」

現在球技大会に向けて絶賛メンバー選定中。運動部のオレ達は当然出場するわけだが、種目がソフトボール・バスケットボール・バレーボールと3種目を2日で学年別トーナメントを行い、とその上各学年の1位での学内1を決めるリーグ戦を実施するので各学年7クラスで各種目21試合となり中々にハードスケジュール。

しかも人数的に何人かは掛け持ちをしないと足りない。となれば運動部に在籍している人間に・・・

「おい、そこの3人。隅で固まってないで、こっちに来てくれ」

いつの間にか球技大会実行委員に収まっていた村上に呼ばれた。

「来いって言っても、なんかやることあるのか?」

「今回の球技大会、お前たち3人の力に掛かっている」

「大げさなことを。学内の球技大会じゃないか。純粋に楽しもうぜ」

雄二が呆れたように答えると

「知らないのか。この学校では、こういった順位のつく行事ごとに学内の順位付けがされるんだぞ」

「え、マジ?そんなの聞いた事無いんだけど」

「うむ、今オレが考えたからな」

「おい・・・」

「冗談だ。ケイ、マジになるなよ。うちみたいな進学校でそんな頭の悪いことするわけないだろ」

「まぁ良いけど。で、オレ達を呼んだのは?」

「おぉ、そうだった。真由美ちゃんは3種目全部出てくれるみたいだけど、ケイと雄二も3種目出て欲しい」

「まぁ運動は好きだし、人数的にある程度予想はしてたし、オレは良いよ」

「助かる。ブッキングしたときにはヤバそうな方の助っ人頼むな」






「結局ケイが言ったとおり1種目てわけにいかなかったなぁ」

「いいじゃないか。別に公式戦ってわけでもないし。思いっきり楽しもうぜ」

「うん、ケイも兄貴もカッコ良いとこ見せてよね」

「そういう真由美も暴れる気満々だろ」

「もっちろーん。目指せ優勝なんだからね」

「まぁ真由美がいるだけでも女子は学年優勝候補だからなぁ」

「えぇ、ケイだって」

「オレの場合はなぁ・・・身長がな。中学の頃とは違うから」

「そんなこと、だってケイは飛べるじゃない。誰より高く。誰より速く走れるじゃないの。バレーでだって兄貴のスパイクをブロックできる1年生なんてケイ以外にはほとんど居ないし、バスケでだってダンクシュートを・・・」

興奮して声を荒げ涙まで流す真由美のあたまを優しくなでながら

「そう、オレは飛べる。でもな身長のある奴らは飛ばなくても手が届くんだ。オレが飛んで手を伸ばしたところに地に足を付けてボディチェックで押し出してくるんだ」

「でも、でも・・・」

「大丈夫、別に悲観してるわけじゃない。オレにはオレのやり方がある。ただ、中学の頃みたいに力ずくで圧倒するようなやり方が出来なくなっただけだよ」

真由美をなだめるように、やさしく抱き寄せた。

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