第36話
「ただいまぁ」
「おじゃまします」
家に帰ると
「あぁ~、おねぇさん。おかえりなさぁい」
さっそく奈月の襲撃だ。しかも最近はほぼ毎日家に寄って行く真由美に以前は『いらっしゃい』と挨拶していたのだが最近ではもう『おかえりなさい』である。
これって・・・いや流石に考えすぎだよな。それにしても
「おい、真由美に先はともかく、おれには何も無しか」
「あぁ、おにぃ、いたんだ。おかえり」
「おまえ、いくら真由美スキィでも態度違い過ぎね?」
以前は結構というか間違いなくブラコン系だったよな・・・
「ん、おにぃのこともスキだけど、おねぇさんは女神様だから。なのであたしはお妾さんにしてね」
「え、いや・・・ソウデスカ、じゃねぇ。しれっとおかしな事言ってんじゃねぇよ。妹を妾にする兄がどこにいるよ」
さらっとブラコンCOしつつもこれですわ・・・
真由美を見ると、さすがに引いて・・・あれ?
「なっちゃん、ケイが素敵なのは確かだけど。なっちゃんとケイは兄妹だからね、悲しいのは分かるけど・・・それでも特別にキスまでは許してあげるから」
え~と、これどう突っ込んだらいいやつ?
結局突っ込みを諦めスルーを選択
「ほら真由美、オレの部屋行くんだろ」
「あ、ケイまって、まってよぉ」
部屋に入ると、ナチュラルにベッドにすわる真由美。こいつ本当にガードが緩いな。いや、ひょっとして挑発してんのか・・・
とりあえず色々スルーしてギターの準備をすすめる。
「んじゃライトフライヤーでいいんだよな。てか他はまだ弾けないけど」
「うんうん、楽しみ」
本当に嬉しそうだな。
とりあえずギターで一通り弾いてみると
「うわぁ、やっぱり前に聞いた時と全然違うね」
「そりゃ、それなりに練習したからな。初めての頃と一緒じゃ悲しすぎるだろ」
「じゃぁじゃぁ、今度は弾き語りで聞かせて」
さらに真由美はノリノリでオネダリしてくる。そこに
「おにぃ、始めたばかりのクセに、そこまで弾けるって相変らずの初期チート」
おい奈月、チートとかどこでおぼえやがった。てか、しれっと部屋に入って来てんじゃない。
「奈月。オレと真由美は今良い感じで楽しんでいるんだが」
「いいじゃん、ギター弾いてるだけでキスしてるわけじゃないでしょ」
こ、こいつ
「それにおにぃの歌たまには聞かせてよ」
ベッドに並んですわっている真由美の反対側にすわってしなだれかかってきやがった。兄妹の1線をギリギリで攻めてきやがる。まぁたまには良いか。
1曲歌い終わると
「うん、やっぱりケイの歌好きだな」
「あたしもおにぃの歌好き。たまには聞かせて欲しい」
そこでふと気づき
「どうした今日は。何かあったのか?」
「え、なんで?」
「んぅ、いつもとちょっと甘え方が違う。なにか嫌なことまでは行かないけど、困ったことでもあったんじゃねぇか?」
「うぅ、おにぃは何で分かっちゃうかな。ちょっと甘やかしてくれるだけで良いのに」
「まぁ15年も家族やってりゃ、多少は分かるようになるってことだな。で、何があったんだ?無理に言えとまでは言わんけど、オレにしろ真由美にしろおまえより1年多く生きてる分、分かることもあるからな」
「あのね、今日男の子に告白されたの」
「ほう。で返事に困ってるのかな?」
「う、うん」
「相手はどんな男なんだ?」
「ん~、ちょっとチャラ系だけど結構なイケメン。成績は中くらいで運動はおにぃほどじゃないけど一通り出来る感じ」
「あぁ察した。おまえの苦手なタイプだな。とは言っても実際にはどうなんだ?」
「うん、おにぃの言う通り苦手なタイプ。なんだけど、女の子に妙に人気があって断ると『いい気になってる』とか言われそうで・・・」
「でも、生理的に受け付けないってとこか?」
「う、うん」
「ふむ」
チラッと真由美を見る。
「うん、何?」
「雄二に頼むか」
「「??何を??」」
「普通に断ると角が立つんだろ?でもそいつとは付き合いたくないんだろ?」
「うん」
おもいっきり頷きやがった。
「じゃぁ簡単だ。もう相手がいることにしてしまえばいい」
「「え?」」
「あ、それで兄貴を?」
「そう、なんたってうちの高校1年生男子ランキング2位様だぜ。文句言う奴はいないさ。ついでに雄二にとっても虫除けになるだろうしwinーwinだろ」
ニヒヒと笑うと
「ケイ久しぶりに悪い顔してる」
そういう真由美もニヤニヤしながら答えた。
「どうだ?雄二なら奈月も知らない相手じゃ無いし。信用も出来るし。フリするにはベストだと思うんだが」
奈月は少し迷ったあと
「う、うん。雄二さんがオーケーしてくれるならお願いしたい」
「よーし、じゃぁ雄二に連絡するか」
スマホから雄二の連絡先を選び通話ボタンを押す。
「もしもし」
「おう、オレだ。ちょっと頼みたいことがあるんだが良いか?」
「これで、明日にでも『昨日は言えなかったけど実は付き合ってる人がいるのでお断りします』とでも言って断ってしまえば良い。なんなら偽装デートくらいはしてもいいしな」
真由美とアイコンタクトを交わす。
「え?」
耳まで赤くなった奈月に追い討ちをかける。
「え、じゃないよ。デートしてる姿を少しくらい見せ付けないと嘘だってばれるぞ。雄二だって彼女持ちって見せる必要があるわけだしな」
「そ、そうだよね。ばれないようにするにはしかたないよね」
「まぁ、スケジュール合わせは雄二とやれよ。そこまでは面倒みれないからな。連絡先は知ってるだろ」
「う、うん。知ってる。おにぃありがとう」
うまくやれよ二人とも・・・
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