第35話
「ケイ早く早くぅ」
「だから、俺はまだ走れないっての」
「あぁ、そうだった。ごめん」
と言いながら戻って抱きついて来る。いつもよりそっと抱きついて来る当たり一応オレの怪我を気にしてくれてはいるらしい。
「おいおい、ちょっと今日は歩きにくいから」
と真由美を引き剥がす。
「むぅ」
おこである。それでもふくらませた頬さえ可愛い。それで、つい
「真由美可愛い」
とあたまを撫でてしまえば
「ケイは、あたまを撫でればごまかされると思ってるでしょ」
と、言いつつもすりよって来る真由美。
「え、ごめん。つい真由美が可愛くて。なでられるのイヤだった?」
「イヤじゃない。イヤじゃないし、むしろ嬉しいけど、でも何か納得がいかない」
「もう少しで家だから、ちょっとはガマンして。オレもガマンしてるんだから」
ふっと真由美の表情が小悪魔にかわった
「へぇ、ケイもガマンしてるんだ。何をガマンしてるのかなぁ。あ、えっちな事?まわりに人いないし良いよガマンしなくても」
言いながら接触面積を増やしてくる。軽く周囲を見回すと確かに人はいない。
あらためて真由美を抱き寄せて唇を重ねた。
ほんの数秒の接触でふたりとも耳まで真っ赤になってうつむいてしまった。
さすがに人が見ていないのを確認したとはいえ道端でのキスは精神的難易度が高かった。それでも、そのままにしているわけにもいかず
「い、行こうか」
言葉少なに真由美を促し、手を差し出すと
「う、うん」
ぎこちなく手を握って寄り添ってくる。そのまま話もしないで家に向かった。
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