第34話

「こんにちわぁ」

「お、ケイ君こんな早い時間に珍しいね」

「あ、神無月先輩こんにちわ。いやぁ陸上でヘマしちゃいまして」

「ヘマって怪我でもしたの?」

「あはは、ちょっと軽い肉離れを……」

「え、大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。さすがに陸上の練習は出来ませんけど、ゆっくり歩くくらいは出来るので」

「それなら良いけど、無理しちゃダメよ」

「無理しないようにこっちに来たんですよ。復帰に1週間くらい掛かるので、その間こっちで集中的に練習させてもらおうかなって思いまして」

「じゃぁ軽く基本コードの練習したらこないだ買った楽譜の曲を弾いてみてね。楽譜もってきたよね」

「はい、ここに持って来てます。基本コード練習をしてからですね」



C,Am,Dm7……

基本コード練習をした後、ライトフライヤーを練習していると、なんとなく視線を感じ、周りを見回すと先輩達が何か生暖かい目で見ているように感じた

「あの、そんなに見られると恥ずかしいんですが……」

そんなオレに神無月先輩が

「みんなケイ君の上達が早くてビックリして見てるのよ」

「ありがとうございます。でも、そう言われても照れくさいです」

苦笑しながら答えると、ひとりの先輩が

「その勢いで上達したら文化祭にも間に合いそうだな。良ければオレ達と組まないか」

「久慈山先輩、それ冗談ですよね。いくらなんでも今のオレにそれは早すぎますよ。それに今までのメンバーとのバランスとかありますし、オレが入る余地ないように見えますからね」

金髪にしたいけど高校生だからと茶髪で我慢していると公言する久慈山先輩に軽く返す。この先輩も背も高く結構なイケメンで昨日も1年の女子から告白されたと噂で聞いた。でもどうやら彼女は居ないらしい……

「あぁまぁつい誘ったけど、言われてみりゃそうか、そうだなぁ……」

何かが久慈山先輩の琴線に触れて誘ってくれたらしい

「お誘いいただけたのは嬉しいですが、本当にオレまだ無理ですから」

何か他の部員から妙な視線を感じるが、ここはスルーして練習に戻った。

1時間ほど練習して、なんとなくスムーズに弾けている気がしてきたので、小声で歌を合わせてみた。

ん~、ちょっと違うな。ギターだけのときだと微妙な違いに気付かなかったけど自分で歌ってみるとうまく弾けているところと、自分ではうまく弾けているつもりが実はリズムが崩れているところが分かった。

崩れているところをとりあえずしばらく集中的に練習してみよう……



「ケーイ、頑張ってる~?」

17時30分になり陸上部の練習を終わった真由美が軽音部に来た。

「おぉ今日はずっとライトフライヤーの練習してるよ。まだまだ人に聞かせられるレベルじゃ無いけど少しはマシになったかな」

「へぇ、あたしには聞かせてくれるよね」

真由美はニコニコとおねだりしてきた。ため息ひとつで

「わかったよ、でも家でな。ここではさすがに恥ずかしいから」

「わーい、じゃぁ今日はケイの家ね」

「それはいいけど、真由美も練習しろよ」

「もっちろん。ケイと一緒に弾けるようになるんだから。まぁまだ曲は弾けないけどさ……」

「大丈夫、真由美は器用だからな、ひょっとしたらオレよりうまくなるんじゃないか」

「そ、そう思う?うふふ」

何か上機嫌になって練習をはじめた。

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