第116話

「いっそサラッと流して歌ったらどうです。ケイ君や真由美ちゃんの本気の歌を文化祭程度のそれも色物カフェのステージになんて必要ないし、もったいないですよ」

京先輩の音楽カフェ案について愚痴を言ったら幸枝がさらっと毒を吐いた。

「あぁまあ、手を抜けばってのは分からんではないけど」

真由美と顔を見合わせる。

「ふふ、分かりますよ。それはそれで気持ち悪いのでしょう」

「ん~、気持ち悪いってのもあるけど、手抜きの癖がつくのが嫌なんだよな」

「クセですか」

「そ、なんていうかな、勉強とか社会人なら仕事みたいに義務的なのと違って音楽って好きでやってるんだよね。それこそ、やらなくても誰にも何にも言われない。そんな好きでやってるのに手を抜くって分けわかんなくない?手を抜くならやらなくても良いだろって」

「まぁ必要ないのに好きでやることでまで手を抜くのはですか。ケイ君も中々面倒くさい性格してますよね。まぁ知ってましたけど」

「ね、こういうとこケイって頑固で面倒くさいのよね」

真由美も同調し苦笑しながら幸枝と顔を見合わせている。

「「でも、そんなとこがまた可愛いのよね」」

「あぁわかったから、男を可愛い言うな」

ふっと真由美が

「ならいっそ反対側にふっきらない?」

「は?反対側ってなんだよ」

「それはね……」

魔界対策会議での真由美の驚きの提案は、文化祭当日公開。


「さて、文化祭の件はそんな感じで、そろそろテーピングしますよ。真由美ちゃん部室へ」

オレは魔界対策会議の間に幸枝に触りまくられつつテーピングは終わっている。

「幸枝、いつもテーピングありがとうな」

「え、突然ですね」

「いや、やっぱり感謝は言葉にしないとな。毎日だとテレが先に来ちゃうから。でも言葉に出来るときにはね」

幸枝が真っ赤になって

「うわぁうわぁ。ケイ君がデレた。うれしい。ね、ね、そこであたしが一番嬉しい言葉頂戴」

「一番嬉しい言葉ってなんだよ」

想像はできるけどな

「ケイ君の彼女にしてくれるって言って♡」

「ダメ。幸枝のことは友達として凄く好きだけど。ライクでラブじゃないから」

「もうぅ、そこは勢いで『いいよ』っていうとこですよ」

赤くなった頬を可愛らしく膨らませながら幸枝はそれでも部室に真由美へのテーピングのために移動していった。



今回とても短くてすみません。本来は前回の最後に付けるべき内容ですが、アップ後に思いついてしまったので。

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