第75話

「こんにちわぁ」

「おぉケイ君、真由美ちゃん。相変わらず二人揃ってラブラブだねぇ」

もうそのくらいの言葉じゃ照れない。慣れました。

「いいでしょぉ。かわいいからつい甘やかしちゃうんですよねぇ」

定位置の左腕にぶら下がってる真由美を抱き寄せてスリスリする。

「あはは、まいったまいった」」

「神無月先輩さすがにもう慣れましたからねぇ」

「で、陸上の合宿どうだった?」

「すっごい濃い合宿でした」

オレは一言に全てをこめ、真由美がキラキラした目で

「陸上の練習もそうなんですけどね、他校の人と仲良くなったり、近くの観光をしたり、パラグライダーの体験をしたりで、すごく充実してました。夜にはちゃんとギターの練習もしましたよ」

「写真とか撮った?」

「いっぱい撮りましたよ。見ますか?」

真由美がスマホを取り出した。ここからはプチ女子会だろうと離れる。

漏れ聞こえてくる台詞が少々気になるが

「これが電車の中でちょっと歌ったときです」

「ほぅ、周りのお客さんは平気だった?」

「ちょうど部の人以外はいなかったので。そのときはあたしも歌ったんですけど、シャメった先輩達から全部回収しました」

「うわ、なにこの綺麗な女の人・・・」

「その人たちは華桜女子大の・・・」

「じゃぁそんな人と仲良くなったの?心配じゃ無い?」

「あぁ、ケイについてはもうモテルことはしかたないって諦めました。その分あたしを甘やかしてもらうことにしましたから」

「このあたりがオルゴールの森でのシャメですね」

「素敵な場所ね、ふたりで行ったの?ってえ?誰?この美少女ふたり」

「一緒に行ったのはいつもの4人にお友達になった女子大学生2人です。で、そのふたりの女の子はあたしと、さっちゃんです。さっちゃんにお化粧してもらったらそんなになっちゃいました」

「まじまじ?今度実際にお化粧したとこ見せてよ。ってあれ?これ結婚式?」

「えぇ、偶然なんですけど本物の結婚式のフラワーシャワーに参加させてもらえたんですよ。花嫁さん綺麗でしたよぉ。しかもケイがぼそっと『いつか』って『いつか』って言ってくれたんです」

あ、真由美が顔を真っ赤にしながら幸せそうに自慢している。すっごく恥しいけど真由美が幸せそうだから良いことにしよう。

「これがバーベキュウの時ですね」

「あ、ちゃんと練習してるね」

「あ、陸上の練習風景もありますよ」

「あれ?ケイ君テーピングしてる?怪我したの?」

「いえさっちゃんが怪我防止って、翌日からはあたしもテーピングしてますよ」

「で、これがパラグライダー体験のときです」

ん、全日程のシャメを見せてる?あれ?嫌な予感が・・・

「それでですねぇ、ここからがお宝画像で・・」

「真由美、やめてくれ。頼む、それだけは」

「えぇ?どうしようかなぁ。でももう陸上部のみんなにはバレテルし、今更じゃない?」

「そんなにケイ君が嫌がるようなシャメなの?」

「まぁケイの大変身ですからぁ。ジャン」

「あぁぁ、やめてくれよぉ」

オレは頭を抱えた。そしてそのシャメを見た神無月先輩は

「え?ケイ君って、真由美ちゃんシャメ間違えてるよ。これは可愛い女の子だね」

真由美が笑う

「クフフ、それがケイなんですよ」

「え?何コレがケイ君?なんで?ってか普通に可愛いし。なんなら女として負けた気になるくらい」

「大丈夫です。陸上部の先輩達も自分達の悪乗りでケイに女装させたくせに、その可愛さに打ちひしがれて泣いていたくらいですから」

「悪乗りっても、それにしたってなんでケイ君が女装することになったの?」

「実はですね、合宿で仲良くなった他校の軽音部のかたと合同でミニライブをって話になりまして、さっちゃんが全力であたしのメイクをしてくれたんですけどね、それを横で聞いていた陸上部女子の先輩方がステージなら男もメイクするだとか言い出していつの間にか悪乗りで、プっくくく。そしたら先輩方が心を砕かれてしまったという笑い話です」

「クスクス、それはそれで楽しい合宿だったようね」

あぁもうどうにでもしてくれ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る