第20話

 「「「おはよぅございまーす」」」

「おぅおはよぉ、今日も3人揃って登場だな」

ゴールデンウィーク、陸上部の練習は午前中だけ。

そして3年生は県大会に進むことができず引退し、1,2年生のみの練習だ。

大会もしばらく無いので地道な基礎トレ中心の練習を午前中いっぱい行い……




「ふぇぇ、さすがに高校のトレーニングはハードだな。な、ケイ」

「ん、まぁそうだな」

「そうだなって、そんな涼しげな顔して言うなよ。自信無くなるだろが」

「そんな平気な顔して文句言われてもな」

「あはは、今日はSLD中心だったからな」

「高校の5000mはスピード競技だぞ。大丈夫か?」

「まぁなんとかなるだろ。ってケイどこ行くんだよ。もう練習おわりだぞ。帰らないのか」

「中庭で弁当食う」

「弁当?練習は午前中で終わりなのは事前に分かっていただろ。なんで弁当持ってんの」

「午後は軽音部に行こうと思ってね」

「え?じゃぁ真由美は」

「真由美も弁当持って来てるはずだぞ。聞いてないのか?」

「まじか?あ、そう言えば朝早くから何かやってたな……」


「やっほ、ケイお弁当食べよ」

ハートマークが飛び交うような甘い口調でよびかけてきたのは当の真由美。

そのまま抱きついて甘えてくる。

「まぁいいか。じゃぁ僕はこのまま帰るよ」

「おぅ、またな」



「さすがに休みの日だと中庭のベンチも空いてるな」

「うん、まわりに人居なくて落ち着けるね」

並んでベンチに座り弁当をひらく。

「そういえば雄二が言ってたけど」

「うん、何?」

「今日の真由美の弁当自分で作ったの」

「そうだよ。さすがに休みの日までお弁当作ってって言えなくて」

「真由美いつの間に料理出来るようになったんだ?」

「えぇ?ケイひどーい。中学の頃には休みの日のご飯あたしが作ってたんだよ」

「中学の頃って。家庭科の調理実習でオレに泣きついて来たのって中1の秋だったよな」

「う、だから、あれから練習して出来るようになったの。そのケイにご飯作ってあげたいって、でもケイの作ったご飯がおいしくて……」

ふたりして俯いてしまった。真由美の耳が真っ赤になっているのが見える。自分の顔が熱い。


真由美が少しだけ復活して

「だから、その。味見してほしいかなって」

「じゃぁ、おかず交換しようか?」

ぱぁっと華が咲いたような笑顔で

「うん、このアスパラベーコンとかピーマンの肉詰めが自信作なんだよ」

「じゃぁアスパラベーコンちょうだい。真由美はどれがいい?」

「んと、出汁巻きいい?」

「いいよ」

と言って箸を出そうとすると。にっこりした真由美が自分の弁当箱のアスパラベーコンを箸でつまんで

「はい、あーん……」

「え……」

「ダレも見て無いからさ」

照れながら口を開けると、そっと口の中に入ってくる

「うん、お、本当に美味い。本当に料理出来るようになったんだな」

真由美も嬉しそうに笑う。

「じゃぁ今度は、あたしに食べさせてね」

上目遣いでおねだりしてくる真由美に

「お、おぅ」

たじたじになりながら、リクエストの出汁巻きを口にいれてやると

目を細めながら、幸せそうにする真由美

「おいしぃ。ケイのおかあさんやっぱり料理上手だよねぇ」

そこからは自分の弁当箱から食べたり、食べさせたりと楽しいランチタイムを過ごした。

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