第139話
「伊藤さん、その走ってるとこすごくかっこよかったです」
「あ、あぁありがとう」
「それでその、彼女のひとりに加えてもらえませんか」
「はぁ?ないないない。オレの彼女は真由美一人だけだから」
「え?でも体育祭でも何人もの女の子に囲まれて」
「真由美以外は友達。わかりますか?」
「でも加藤さんはどうみても彼女ですよね」
「いや、なんで幸枝が彼女枠なわけ?」
「名前呼びで呼び捨てで、体育祭であんなふうに守ってあげて。どう見ても彼女じゃ無いですか」
こんな事が体育祭終了から何度も……
結論から言えば部対抗リレーは勝った。というか勝ちすぎたのかもしれない。それが現状の原因のひとつなのかなと少し現実逃避。
なぜか部対抗リレーだけやたらとハイテンションだった実行委員の放送を思い出し……
「さぁ部対抗リレー、唯一赤白のチームの得点に関係しない競技です。スウェーデン形式のリレーで、1走100m、2走200m、3走300m、4走400mを走ります。見所はその年によって変わるハンデを背負った陸上部がハンデをどう克服するか。そしてどこまで順位を上げられるか。他の運動部がどこまで粘り勝ち抜けるかです」
入場後競技の説明が続き
「今年の陸上部ハンデの発表です。体育祭運営委員長お願いします」
「今年のハンデは、出場選手枠4人のうち3人までを1年生。また、そのうち最低1名を女子とすること。そして残りの学年指定なしの選手枠も女子とすることです」
解説の放送が煽る
「さぁ男子のみ4人、主に2年生で出場選手を埋める他の部に陸上部はどこまで迫れるのか。これは結構重いハンデだぁ」
「ここで注目の選手を見て行きましょう。陸上部以外だとやはりここ、野球部。最近は機動力に力を入れたチームになっているためかなり速いぞ。1走、2走は100mを11秒台で走る俊足だぁ。毎日の走りこみでスタミナも十分。1位を狙ってきているぞ。そして次はサッカー部、100mの最高タイムこそ野球部に譲るが、全員が12秒代のタイムを持つ走る黒ヒョウ集団。それに対抗できるか、ハンデを背負った陸上部。1走、2走は女子だが侮れないぞ、なんと二人とも秋の新人戦県大会出場を決めているスプリンターだ。そして3走も1年生ながらこれも5000mではあるが新人戦県大会出場を決めているランナー、さらに注目のアンカーは、おっとこれは先ほど公開告白を受けた伊藤選手だ。彼も1年生で800m新人戦県大会出場を決めているぞぉ。ハンデを背負いながらも強豪を揃えてきた陸上部と各部の俊足の戦い。これは面白いことになりそうだ」
いや、面白がってるのは違う意味で面白がっているだろうと心の中で突っ込みをいれつつ
「うは、やっぱり野球部もサッカー部も速いんだなぁ」
とこぼせば。京先輩が
「でも想定よりは速くないね。私たち2人で1位と3秒以内の差で雄二に渡して見せるよ」
「そして僕がトップと1秒以内に追い詰めてみせる」
「そうすればオレ(僕(私(あたし)))達の勝ちだ」
「さぁ部対抗リレー、1走の準備が整ったぞ。スターターの合図で勝負の開始だぁ」
しかし、このノリノリの放送ってなんとかならないのかね。
「第1走、やはり1位は野球部。速い速い。わずかに遅れてサッカー部だ、続いてテニス部。注目の陸上部はさすがに女子……いや、速いぞテニス部に続いて4位で2走にバトンがおぉぉ凄いぞいつバトンが2走に渡ったか分らないスムーズなバトンパスだ。すばらしいバトンパスで陸上部が3位に浮上したぞ。それでもさすがに女子の足では野球部サッカー部を追うのは辛そうだ。ジリジリを差が開いていく。」
それでも思ったより差が小さい
「真由美頑張れー」
2位サッカー部とわずかな差で雄二にバトンが渡った。
「おぉっとついに陸上部も男子生徒にバトンが渡ったぞ。1年生の長距離選手とはいえ陸上部さすがに速い。2位サッカー部も野球部に追いすがっているぅ。3走残り100mで完全に団子状態だ。やはりここは陸上部が強い。サッカー部、野球部を抜きついに1位で、アンカーにバトンがわたったぁ」
「頼むぞケイ」
「まかせろ」
「ここまで来ては野球部もサッカー部も陸上部に手が届かなそうだ。陸上部アンカー伊藤選手、後続をグイグイ引き離し独走だぁ」
ゴールと共に駆け寄ってくる真由美。その後ろから雄二も京先輩も走ってきているのが見え。ボスンと抱きついてきた真由美を優しく抱きとめ頭から背中を撫でる。
そして
「「「勝ったねぇ」」」
とハイタッチを交わした。
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