第147話
「久しぶりに会ったんだし、カラオケでも行かね」
八重樫の誘いに
「悪いな、今日この後予定が入っているんだわ」
「大会の後に予定って、伊藤どんだけ忙しいんだよ」
「いや偶々だが」
「どんな用事だ。あ、森川ちゃんとデートか」
「まあ真由美と一緒なのは確かだがデートじゃねぇよ」
八重樫だけでなく他のメンバーも頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるので
「軽音部の練習があるんだよ。文化祭に向けてのな」
あ、幸枝の目が光った。
「ケイ君、見学できないかな」
「ああ、どうかなあ」
真由美と顔を見合わせ
「一応念のため聞いてみるか」
スマホを手にしてトークアプリでメッセを送る。
key:幸枝が今日の練習を見学したいって言ってるですがいいですか?
さすがに即既読とはならないので雑談しながら待っていると。スマホに反応があった。
みほちゅん:良いですよ。メンバー以外の人の意見も聞きたいですし。他にも見学希望者がいたら数人くらいなら構いませんよ。ただし騒がないようにと言っておいてくださいね。
key:ありがとうございます。
「良いってさ。ただし練習だからな。騒ぐなよ。あと数人なら良いって言ってくれてるんだけど、みんなも来る?」
「お邪魔じゃなければ。行きたいな」
レイさんと頷く葉子さん。
「私もいいかな」
神崎さんも参加表明。
「私も行きたいのは山々なんだけど、この後用事があるのよねぇ」
京先輩が残念そうだ。
「雄二は?」
「僕はなっちゃんと約束があるから」
「了解。奈月のことは頼むな」
「で、お前らはどうする」
最後に八重樫と御苗に聞くと、ふたり顔を見合わせたあとで
「それって、伊藤たちの地元でなんだろ」
「まあ、そうだな」
「さすがにこの時間からだとキツイなぁ。また機会があったら頼むわ」
結局、俺、真由美、幸枝、レイさん、葉子さんのいつものメンバーに神崎さんの6人でスタジオに向かった。あれ?女子率がおかしなことになっている気がする。ま、気にしたら負けだな。
電車で小一時間移動し地元の駅に戻り聞いていたスタジオに向かう。
「軽音部の練習といってたけれど、どんなバンドなの?」
葉子さんの疑問に答えたのは幸枝
「お二人はKKシーズンって聞いたことありませんか」
「ん~どっかで名前は聞いたことがあるような」
葉子さんの言葉にレイさんがかぶせて
「あ、聞いたことある。結構人気なアマチュアバンドですよね。ライブチケットなんか即日売り切れるっていう」
「え、まさか」
「そのまさかです。KKシーズンは、うちの軽音部の先輩で、オレと真由美はサブメンバーなんです」
「で、今日はその文化祭に向けたスタジオ練習なんです」
「ケイ君の歌って素敵なんですよ。ゴールデンウイークのミニライブで初めて聞いて、あ……」
幸枝が真っ赤だ。幸枝の照れた顔が珍しいなぁと眺めていたら
「ケーイ、見過ぎ」
「痛い痛い痛い。わかった。わかったから」
真由美に脇腹をつねられてしまった。
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