第43話
「さて、球技大会お疲れ様でした。みんなの頑張りはちゃんと見てましたよ。その頑張りをそのまま勉強にも生かしてね。来週から中間テストです」
とたんに沸きあがる、怨嗟の声。
「うわぁ、忘れていたかったぁ」
「全然勉強してねぇ」
教室は高校生の本分を思いださせられて阿鼻叫喚を極めた。とはいえ高校入学してまだ1月半、この学校でいきなり本当に落ちこぼれるほど勉強してないやつは居ないだろう。とはいえ得意不得意の科目はあるわけで
「ね、ねぇケイ。今日から部活休みよね」
「そうだな」
今日からテスト終了までは部活は原則休みだ
「じゃぁさ、授業後一緒にテスト勉強しない?」
「お、いいね。ひとりでやるより頑張れそうだ。とりあえず図書室でやろうか」
真由美は受験勉強で頑張ってレベルを上げたタイプだからか、勉強に対して十分実力はあるのに自己評価が低い。成績の良かった期間がまだ短くて実感が薄いのだろう。自信をつければもっと良くなるんだろうけどなぁ。などと考えていたら
「私も良いかしら?」
「え?あ、神崎さん。むしろ助かるよ。理系科目はオレで良いけど。文系はオレ苦手だし、なぁ真由美も良いだろ」
「ん~・・・まぁ、そうね良いわ」
こいつまさかテスト勉強と言いながらデート気分だったんじゃないだろうな
授業後に図書室に行き机の上に教科書とノートを並べる。
「とりあえず、それぞれに勉強して分からないところがあったら聞くってスタイルで良いかな」
「「いいよぉ」」
と勉強を始めたところに
「私も仲間に入れてもらってもいいかな?」
声を掛けられたので。顔を上げるとにっこりと笑顔の加藤さんがいた。
加藤さんがオレに告白しオレが断っても諦めていないという事を知っているため反応に困り3人とも固まる。しかも普通に良い人なんだよ加藤さん。努力家で人当たりも良いし。断りにくい
「勉強するだけだし、いいかな?」
真由美をうかがいながら受け入れを表明。
「まぁ、そうだね」
「まぁふたりが良いなら。私は別に」
「ありがとぉ。じゃぁ頑張ろうね」
加藤さんはニコニコである。
分からないところを教え合いながら特に問題なく時間が過ぎ18時になった。
「そろそろ図書室を締めます。みなさん終わりにしてくださいね」
図書委員が声を掛けてきた。
「もうそんな時間か。今日はここまでにしようぜ」
「いやぁ噂には聞いてたけど、伊藤君の理数はパないね」
「理数だけね。他は普通だから。それに神崎さんの英社もレベル違いすぎでしょ」
「加藤さんって全部平均的にハイスペックでびっくりだった。このメンバーだとあたしだけオミソみたい・・・」
「おいおい、真由美はまだまだ成長途中だろ。中3の1学期までならこの学校に来るの絶対無理ってとこから頑張ってここまで来たんじゃないか。お前ならすぐ追いつけるって」
一応本気でフォローしておく。
「え真由美ちゃんってそうだったの?」
「おう、こいつは中3の1学期の中間テストまで偏差値50ちょうどくらいだった。それをな、オレと雄二がこの学校に進路決めた途端に鬼気迫る勉強して追いついてきたんだよ」
「凄いね。うちのボーダー偏差値65超えてるはずだからたった1年じゃない、10ヶ月で偏差値15以上上げてきたんだ」
「そう、こいつはなんでもやれば出来るヤツなんだよ」
照れる真由美の頭を軽く撫でた。
「さぁ帰ろう」
帰り道いつもの公園のベンチで
「真由美も頑張ったな。この調子で頑張れば本当に勉強も上位に入れるぞ」
「うん、頑張った。あたし超頑張ったからね。ケイご褒美ちょうだい」
両腕を開いて軽く目を瞑る真由美が何を強請っているのかは言うまでもない。
まぁ頑張ったし、オレもイヤじゃないというかしたいし・・・
真由美の背中に両手を回し抱き寄せる。柔らかいふたつのかたまりを胸に感じながら、くちびるを合わせる。
どのくらいそうしていただろう。どちらともなくゆっくりと離れた。体感ではほんの1分程度だったが、すでに日が暮れて街灯が点き始めている。
「帰ろう、暗くなって来てるから送るよ」
「うん」
幸せな気持ちで通学路を並んで帰った。
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