第42話
朝食後オレ達は3人揃って家を出た。
「奈月、かぁさんにさっきのこと言わないでくれてありがとうな」
一応礼は言っておかないとな。
「それは別に良いんだけどさ。私はまだおばさんにはなるに早いかなぁて思うの」
「お、おば、なっ」
真由美が真っ赤になってうつむきながらオレの胸に頭をつけてきた。これはもの凄く恥しがってるやつだ。かくいうオレも顔が熱い。
「そ、そんな事してないからな」
「そうよ、そこまでの事はしてないから」
オレと真由美の声が重なる。
「そりゃ、あの時はまだってだけでしょ。あれで私が声かけなかったらどうなってた?」
「あぁ~・・・」
オレも真由美も顔をそらした。いや、多分あの時は踏みとどまれたと思う。でも、これからもずっと踏みとどまれるかと言われれば、いつかは一線を超えてしまうかもしれない。
「うぅぅ」
ふたりして頭を抱えてしまった。
「はぁ、もう準備しておけば?」
奈月が投げやりに言い放った。
「準備?」
オレ達がわからないでいると。あきれたように
「ふたりとも私より年上なのに知らないの?」
「知るって??」
「あのね。そういうことは恋人同士なら自然な事だと思うの」
「お、おぅ」
真正面から来たな。
「でも、そういう事をしても私をおばさんにしなければ良いのよ」
「それは・・・」
鈍感なオレ達を見て、奈月はスマホで何かを検索し、スッと差し出した。そこには一番素肌に近いポリイソプレン製の風船の画像が出ていて
「つまり、常備しろと・・・」
オレも真由美もずっと耳まで真っ赤な自信がある。まさか妹にここまで生々しい提案をされるとは。
「あ、おにぃはちゃんと着ける練習しておかないとだからね。ちゃんと着けないと破れたり外れたりするらしいから」
もうオレ達ふたりは何も言えず、真っ赤になってうつむいていた。
数分経ち再起動したオレは奈月に
「ところで奈月は、なんでそこまで詳しいんだ?」
「え?ふ、普通だよ。おにぃとおねえさんが知らなさ過ぎるだけだよ」
微妙に挙動不審な奈月に
「なぁ雄二に聞いて良いか?」
「にゃ、にゃんの事かな。雄二しゃんとはきゃんけいない」
思いっきり動揺して噛む奈月に、それ以上は追求せず
「ありがとうな」
と伝えた。
「あと、おねぇさん。このアプリも使ったほうが良いよ」
何なら更に真由美にはアドバイスがあったようで・・・
あ、真由美がさらに固まった
「そのふたつで安心して愛を確かめ合ってね~」
言うと奈月は分かれ道を中学方向に走っていった。
それを見送って
「あ、時間。少し急がないと遅刻するよ」
真由美の声にふたりで一緒に走りだした。
走りながら、真由美に
「えと、一応準備だけするよ」
「う、うん」
真由美も一言だけ返事をした。
前に神崎さんを見つけた真由美が声を掛けた。
「祐香ちゃん、おはよぉ」
「おはよぉ。あれ?ふたりとも真っ赤な顔してどうしたの」
「・・・・・」
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