第12話
土曜日
「ケイ、おはよぉ」
真由美が後ろからドンと抱きつく
「おっと。おはよ真由美」
後ろから雄二が苦笑しながら
「おはよ、ケイ。真由美、後ろからってのはいくらケイでも危ないから」
「え~?ケイなら平気平気。こんな程度で怪我とかするわけないじゃん。あのときなんかもっとさぁ……」
「おはよ雄二。真由美そっから先は3人の秘密だろうが。こんなとこで口にすんなよ」
「平気だよぉ。分かる人いるわけないじゃん」
「ほぉ。鬼百合……」
「うわぁぁ、もう言いません。それ以上はやめてぇ」
「よろしい。この話題はアンタッチャブルな」
「んじゃ行くか。オレとケイは今日は応援だけだけど、真由美は遅れるとコール漏れになるからな」
「あーい」
「真由美、荷物寄越せよ。持って行ってやるよ」
「え?いきなりやさしいじゃん」
「今日はオレと雄二は出場ないからな」
「なーんだ、てっきり彼女補正かと思ったのに……」
『言えるか、そんなの』
陸上競技場入り口
「お、来た来た。ケーイ、ユージー、マユミー」
「あ、京先輩。おはようございます」
「3人ともちゃん早めに来たね。えらいえらい」
「そりゃ来ますよ。てか先輩早すぎません?他にダレもいないんじゃないですか」
「マネージャーの純ちゃんとか来てるよ」
「うわ桐原先輩も早い。じゃぁオレと雄二は今日は出場種目ないから桐原先輩の手伝いに行ってきますね」
「真由美、荷物ここに置いておくからな」
「桐原先輩、手伝いにきました」
「ありがとう、じゃぁドリンクのジャグと追加用のドリンクの入ったクーラーボックスお願いできるかな。あれ重くって」
「はい、じゃぁ持って行きますね」
雄二と一緒にドリンクを確保してある席に運ぶ。
今日が出場種目の先輩達と一緒に真由美がおしゃべりをしていた。
ちょっと顔が赤いけど、何話してるんだろう。
「じゃぁ何、真由美ちゃんから行ったの?」
「あたしからっていうか、目の前で神埼さんにはめられたケイが自爆したので、ここで行かないとって」
「自爆?どんなことしたの?」
「登校中にケイにあたしと付き合ってるのかってド直球で聞いて、あたしが後ろにいるのに気づいてなかったケイが初恋の相手があたしだって……」
オレ達に気づいたはずの先輩達はニヤけながら追撃を
「それで真由美ちゃんから告白しちゃったんだ」
「だ、だってケイって初恋だったって言ったけど、落ち着いちゃったって言うんですよ。それじゃあたしから言わないと幼馴染のままになっちゃうって思って。本当はケイから言って欲しかったけど」
「ほうほう、告白のセリフは」
「えぇ。せんぱいそこまで言わないとダメですか?」
「そこまでって、もうここまで言ったら白状しないさい」
「うぅ、ずっと前から好きだって、一緒にいたいから陸上部も入ったって言って。今でも女の子として少しでも好きなら付き合ってって……」
「けなげだねぇ。それでケイ君のOkの返事は」
やばい
「ドリンク持って来ました。どこに置きますか」
恥ずかしい話を暴露されるのを防ごうと声を掛けたが、横から裏切り者が
「真由美の告白を聞いてケイはいきなり真由美を抱きしめたんですよぉ。いつもの軽くじゃれあう抱き付き方とは明らかに違う、あれは抱きしめるってのがぴったりの感じでしたねぇ。通学路でですよ」
「キャー、ケイ君大胆。情熱的。あたしも彼からそんなことされたい」
「あんた、彼いないでしょうが」
「いいじゃん、告白の返事が情熱的なハグなんて最高じゃん」
「告白されたいっていつも言ってるくせに」
「いやぁ今の話し聞いたら、告白するほうになるのもいいかなぁって。まぁ今は相手がいないんだけどな」
あ、なんか黒い天使が舞い降りた気がする
「で、ケイ君」
「は、はい」
「真由美ちゃんを抱きしめた感想は……」
「あ、オレ桐原先輩の手伝いに……」
脱出しなくては
「ケイ君、もうお手伝い良いわよ。もう終わったから」
ニコニコと桐原先輩がオレの肩をつかんだ
『くぅ、逃げ道をふさがれた。ならば』
「京先輩に手伝い終わったって報告を……」
「あ、京ちゃーん。こっちこっち。もうケイ君たちお手伝い終わったって」
『ぐふぅ、こっちもふさがれた』
これは、あきらめるしかない
「はぁ、わかりました。白状しますよ」
「最初からそう言えばいいのに」
ニコニコと迫ってくる先輩女子たちに引きながら
「まぁ正直言うと、いつも抱き付かれてるし、抱き付いてるんで、感触はまぁいつもとかわらんかったですよ」
せめてもの逃げ
「いつもの抱き付きとは違っただろうが、あれだけがっつり抱きしめるってのはさすがに普段は無いだろ」
ここでまさかの親友からの追撃
「えとね、実はあたしも聞きたいの、あのとき凄く嬉しかったけど、ケイはどんなふうに感じたのかなって」
なんと当事者たる真由美にまで裏切られた
「そ、そんなの二人きりのときに聞いてくれれば……」
「ケイ、そういうの言ってくれないでしょ」
ここに来て普段照れて言えてないことが裏目に
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