第55話

「えーと、オレ達の部屋は桔梗の間か」

玄関ホールから入り1回奥の通路左側3部屋が男部屋で向かいの3部屋が女部屋になっていた。桔梗の間はその中で一番奥。5人で1部屋の割り振りになっていた。オレが部屋の鍵を開けようとしたそのとき、更に奥側の隣の部屋のドアが勢い良く開き誰かが飛び出してきた。『ドカッ』っとぶつかってきたのは小柄で眼鏡をかけたロングへヤーの女の子だった。ぶつかって倒れそうになったその子を

「おっと、危ない」

とりあえず抱きとめ。

「大丈夫ですか?飛び出すのは危ないですよ」

と声を掛ける。

「きゃぁぁ」

悲鳴と同時に平手が飛んできた

「おっと。ビンタはいらない」

スッと避けて。

「え?」

きょとんとする女の子に

「そんだけ元気なら大丈夫だね。飛び出すのは危ないから気をつけてね」

と言い置いて、部屋に入る。

「おぉ安い公共の宿っていうからもっと安っぽい感じの部屋を想像してたけど、良い部屋じゃん」

言いながら、とりあえずスポーツドリンクを飲む。

「標高が高いから水分多めに取っておいたほうがいいよ」

同室の人間に誰と無く声を掛ける。こういう雑学は得意。

しゃべりながら10分ほど座って休憩。ぼちぼちとトレーニングウェアに着替える。荷物からトレーニング用のジョギングシューズ・サングラス・日焼け止めを取り出す。日焼け止めをウェアで隠れない箇所にしっかり塗って準備OKだ。

「そろそろ行こうか」

前庭には既に半数ほどの部員が集まっていた。

「よぉ、ケイ今回の合宿で一緒になってる学校が分かったぞ」

御木本健太先輩が軽い感じで話しかけてきた。まぁなんというか身長175センチ、ガッチリ型の体形で昔ながらのスポーツ刈り、種目は砲丸投げという、まぁイカツイ暑苦しいタイプの先輩。まぁ後輩想いで良い先輩なんだけど、行動がいちいちうっとうしいんだよねぇ。まぁ嫌いじゃないけどね。

「先輩マメですねぇ。よその学校に彼女でも作るつもりですか?」

と笑うと

「おぅ、それいいな。だが俺は単に色々な人と交流して楽しみたいのがメインだ」

この人って色恋に興味薄いなぁ。先輩女子見てると数人が狙ってる感あるんだけどなぁ。あっけらかんとして明るいし裏表無いしまぁ凄くもてるって事は無いにしてもそれなりに好かれている先輩だからまぁ気軽につきあう。

「あはは、あいかわらず恋愛に興味薄いですか。で、どんな学校がありました?」

「おぅ今居るのは南藤高校の将棋部、山家高校の茶道部、山米大学の柔道部、華桜女子大学の空手部だな。3日目からあと1校、周時高校の軽音部が来るそうだ」

「へぇ、どこもどこかで聞いた事があるような学校ですね」

「おぅ、どこも全国区のガチ勢の人たちだ、まぁオレ達みたいなエンジョイ勢とはちょっと毛色が違うかもだな」

「うわぁガチ勢ですか・・・別に楽しく交流するだけなら良いですけどねぇ」

中学時代の県大会を思い出してちょっと憂鬱になった。別にあいつら悪い奴等じゃなかったんだけど、色々煩かったんだよなぁ。

「でも大学生がいるんじゃ、あまり出しゃばると色々めんどうじゃありませんか?」

「なぁに、高校生同士なら問題ない、仲間はずれにする訳ではないけれど、年代が違うので高校生だけで集まれば良いだろう」

「いや、それなんか変なフラグになってません?」

そんな会話をしていると

「そろそろ集まったかな、点呼するぞ」

京先輩の声が聞こえたので集まる

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