第6話 

 「伊藤君、おっはよぉー」

「あぁ神埼さん、おはよぉ。朝から元気だねぇ」

朝の通学路でポニーテールがトレードマークのクラスメート神埼祐香が声を掛けてきた。

「ねぇねぇ、伊藤君って真由美ちゃんと付き合ってるの」

「いきなり、ど直球で聞いてくるね」

「いいじゃん。でどうなのさ」

「真由美は雄二と一緒で幼馴染なだけだよ」

「でも女子では一番仲がいいよね」

「ぐいぐい来るね。そりゃ生まれてからずっと一緒に居る幼馴染だから仲が良いのは当たり前でしょ」

「でも恋愛感情は無いの」

「ん~、まぁもう時効だと思うので白状しちゃうと、初恋の相手は真由美だったりするよ」

「え~、で告ったりしたの」

「純情な中学生だったし、振られてそれまでの関係まで壊れるのが怖くてさ。臆病になって告白はできなかったよ。で、そのままで落ち着いちゃった感じかな」

「だってさ真由美」

後を見るといつのまにか顔を真っ赤にした真由美が立っていた。

「うわ、真由美いつのまに。もう昔の話な。中学1年の頃だから・・・」

自分でも何を言っているのかわからない言い訳をすると

「今は?」

「え?」

「今も、あたしのこと好き?」

「ちょ、ちょっと真由美。ここでそれ聞くの?」

「いいじゃない。それでどうなの。今でもあたしのこと好き?」

ここは、なんとか逃げられないものかと、助けを求めようと周りを見回しても

ダメだ、みんな興味津々で助けてくれそうに無い……

「あたしは、ケイのこと好きよ。ずっと前から。だから、……陸上部だって少しでもケイと一緒にいたいから入ったんだからね」

「オレも真由美のこと好きだよ。でも、その……。恋愛的な好きと幼馴染としての好きが混ざっちゃって、今はどういう好きなのか自分でも分からないんだ」

真由美は少し寂しそうな表情をしたあと、それでもニッコリと笑って

「うん、今はそれでいい。少しでも女の子として好きな気持ちをもってくれてるなら……。もっと一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。好きよ。あたしと付き合って」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る