第48話

期末テストの最終日

「終わったぁ」

「あとは夏休みを待つだけだぁ」

「・・・通知表・・・」

ボソっとつぶやかれた言葉に机に突っ伏して死亡するやつが数人。幸いなことにオレ達は、その中にはいない。今回も4人で勉強会をした結果、答案用紙の返却こそまだだがみんな良い手ごたえで期末テストを終えることが出来た。そういえば雄二は勉強会に参加しなかった。一応誘ってみたんだが、別でなにやら用事があるとか。まぁあの様子だと奈月に勉強を教えてくれてたとかだろう。奈月の機嫌も凄く良かったしな。

そんな弛緩した空気の教室に

「あ、ケイ君いたぁ」

最近はもう普通に加藤さんがやってくるようになった。呼び方もいつの間にか伊藤君からケイ君になっていた。真由美に抵抗感を抱かせることなく、いつの間にか。これがコミュ力強者かと思える上手さだ。

「そりゃ、うちのクラスだしいるだろ」

「つれないなぁ。同じ陸上部仲間じゃん。もう少しフランクになれない?」

「加藤さんがオレのこと諦めてくれたらなれるかもね」

「むぅ、あいかわらずガード堅いなぁ。あとそろそろ名前で呼んでよ」

「あぁ、それも無理かなぁ」

そんな話をしているとやっと真由美が来た。

「あぁ、さっちゃんダメだからね」

オレに抱き付いてきながら文句を言う。その割りにいつの間にかさっちゃん呼び。女同士ってわからん。

真由美を軽く抱き締めながら

「ん~やっぱり真由美は抱き心地いいな」

と頭を撫でると、ふにゃっとした笑顔で

「抱き心地だけぇ?」

「え~ここで言わせるのかよ」

クスクス笑いながら

「言わないと、噛んじゃうぞ」

「なんだよ、その噛むってのは」

「噛むっていうのはねぇ、ガブガブッ」

本当に肩に噛み付いてきた。そんなに強くじゃないので痛くは無いけどビックリした。

「お、おいやめ。わかったわかった。言うから」

「ふふん」

真由美はマウントとれたことでドヤ顔で抱き付いてきた。

「真由美を抱き締めていると、安心するし、幸せだし、あったかいもので胸がいっぱいになる。離したくなくなる。あと、実はちょっとエッチな気分になる」

さすがに恥ずかしいので、真由美だけに聞こえるように耳元でそっと囁く。顔が熱い。耳まで真っ赤になってる自信がある。

あ、真由美が固まった。抱き付いてきてオレの胸に付けているので顔は分からないけど耳まで真っ赤になっている。しばらく抱き合って落ち着いた真由美がオレが聞き取れるギリギリの小声で囁いた

「あたしも一緒。でもタブン、ちょっと違うのは・・・その、あたしは凄くエッチな気分になっちゃうの」

「ごめん、オレは照れくさくてひとつウソついた」

「むぅ?」

「オレも凄くエッチな気分になる」


そんな事をしていると

「ん、んうん」

咳払いをして

「ふたりとも、教室の風紀を乱し過ぎないで欲しいんだけど」

安定の神崎さんの声が響いた。

「まったく、私のターンだったはずなのに、ナチュラルに持って言ってハートマークが見えそうなイチャツキを始めるんだから」

少し落ち込んだ顔で加藤さんがぼやく。

最近のオレ達の関係は大体こんな感じだ。実は悪くないなと思っている自分がいて、少し前の加藤さんから逃げたいと思っていた自分がウソに思える。



こんな時間が続くといいな

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