第69話

合宿5日目

今日は雄二もテーピングしている。テーピングの範囲は3人で一番少ない。幸枝によるとフォームや種目、トレーニング量、そういったものをトータルで考慮してテーピングをしているそうだ。

今日もオレ達に絡んできたのは杉田浩志先輩。中距離走グループの2年生。つまりオレのグループの先輩なんだが

「今日は雄二もか?」

「ええ、僕は良いって言ったんですけどね」

「なんだ?加藤ちゃん、伊藤を諦めて雄二狙いにかわったか?」

さすがにこれはいただけない

「先輩、雄二はおとなしいから言いませんけどね。今のは雄二にも幸枝にも失礼きわまりないですよ。だいたい何ですか、何かといえば、オレ達の関係を全て恋愛ごとにして。オレ達のことよりご自分の彼女作ったらどうです」

「な、てめ。ちょっとばかり足が速くて女に持てるからって、先輩に対する態度じゃねぇぞ」

そこに御木本先輩が割って入ってくれた

「おい、浩志。大概にしておけ。おまえ最近ケイに絡みすぎだ」

「いや、だけどこいつは」

更に京先輩もやってきた

「ちょっと喧嘩はやめてよ。何があったのいったい」

「こいつが

オレをアゴでさしながら

ちょっと足が速いからって偉そうにしやがるから」

京先輩が残念そうな目で杉田浩志先輩を見ると

「杉田君、ホテルに戻ったらロビーに来なさい。あなたとケイの決定的な違いを説明してあげる。今はみんなのメニューが進まなくなるから、これ以上やめること」

「いいだろう内藤。伊藤が特別だってのを納得できるように説明してもらうぞ」


「みんなちゃんと集中してね。普段より負荷上げてあるんだから集中切らすと怪我のもとだからね」


昼食時

「雄二、真由美、幸枝もちょっといいかな」

「なんだ」

「ほーい」

「何かありました」

3人3様の反応で集まってくる。そこで

「京先輩、すいませんが先に競技場行ってますね」

無言で手をひらひらとさせて返事の代わりにする京先輩を確認してから、4人揃って陸上競技場に移動する。競技場の片隅でスマホをとりだし

「これ見てくれ」

「何これ、空手の大会?」

真由美はちょっと軽い反応だ

「へぇ、結構大きい大会みたいですね」

幸枝は、良く分かってないようだ

「ん~、これって」

雄二は何かを察した

「今年の竜虎杯のリザルトだ。一般女子を見てくれ」

「「「あ」」」

「これって新見さん?」

「でも、竜虎杯ってガチガチのフルコン実戦派大会じゃ」

「間違いなく全国でも本当にヤバイやつらが集まる大会だよ」

4人が言葉を失った。

見ていたスマホの画面には『竜虎杯一般女子の部優勝:新見友子』

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