第6話 伝説の息子の狩り
リュークが魔法を習って六年、剣を習ってからは四年ほど経った。
リュークは七歳となった。
今日はリュークは一人で森に出ていた。
最近はもうこの森の魔物をリュークは一人で倒せるようになったので、一人で魔物狩りしている。
しかし、リュークは気づいてないが完全に気配を消してついてきている者がいた。
「今日もリュークは一人で冒険か……まあ大丈夫だろうけど、一応な、うん」
ヴァリーだった。
とてつもなく過保護なヴァリーであった。
しかし、この魔の森をもう一人で冒険出来るようになったリュークも、そんなリュークに気付かれずに尾行しているヴァリーもやはりどれだけの強者かがわかるような光景だった。
「最近はドラゴンばっか狩ってたから、今日は違うのがいいかなぁ……」
そんなことを言いながら魔物を探すリューク
すると、リュークがある魔力を探知した。
「お、この魔力……あいつだ!」
そう言ってリュークは駆け出した。
一緒にヴァリーも駆け出していた。
数十秒ほど走って着いたところには、人の姿をした魔物がいる。
しかし、体長は四メートルほどあり、顔が人間の顔ではなく牛の頭であった。
──ミノタウロスだ。
この魔物もドラゴンほどではないが、相当な危険な魔物であり、到底一人では倒せない魔物として知られている。
しかし、まずその世間のミノタウロスへの評価を知らないリュークは平然としていた。
「こいつも美味いんだよな……ドラゴンより俺はこっちの肉の方が好きだな!」
そう言ってリュークは腰に携えていた木刀を抜く。
抜刀。
その動きだけで一流の者は相手の実力をある程度見抜く事が出来る。
その一流の者が今のリュークの抜刀を見れば、相当な手練れだと気づくであろう。
しかし、そんなことも知らないミノタウロスはいきなり目の前に来た小さな生き物を殺そうと、両手を振り下ろす。
拳の大きさがリュークの身体ぐらいある。
その拳がリュークへと真っ直ぐに振り下ろされる。
リュークはミノタウロスの攻撃を見切り、木刀を構える。
木刀と拳が衝突する瞬間――ミノタウロスの両手はリュークの横へと流れていた。
ミノタウロスは体勢を崩し、前のめりになる。
そこをリュークは狙い、前のめりになって近くなった顔面に木刀を突き刺す。
正確に貫いた木刀はミノタウロスの目を貫き脳へと達する。
脳を破壊されたミノタウロスは、断末魔も叫ぶことなく絶命した。
「よし、終わり!」
そう言って木刀に着いた血を払う。
その際木刀を振るうが、普通はそれだけでは血は落ちない。
しかしそれだけで血を全部払えるだけで、やはりリュークの技術の高さが伺える。
「あとはこいつを異空間に入れて……」
そう言ってリュークはミノタウロスに向けて手のひらを向けると、ミノタウロスが一瞬で消えた。
リュークが魔法でミノタウロスを異空間に入れたからだ。
これは時空魔法と言って、物を不可視の収納空間に入れられる魔法である。
生き物は無理だが、死体は入るのでミノタウロスも入れる事が出来る。
「よし、今日は結構見つけるのに時間もかかったし帰るか」
そう言ってリュークは来た道を戻り始める。
そしてヴァリーも急いで家に帰った。
十分ほど歩くと、家が見えて来た。
「母ちゃん! 父ちゃん! ただいま!」
「あら、お帰りなさいリューちゃん」
「おう、お帰り」
フローラは外で洗濯物を干していて、ヴァリーは横で木刀を振っていた。
ヴァリーはリュークより早く帰るために急いで帰ったのでちょっと汗をかいてしまい、それを誤魔化すために木刀を振っていた。
フローラはそれを見て少し呆れていながらも、穏やかな顔で笑っていた。
「母ちゃん母ちゃん! 今日はミノタウロス狩ってきたよ! ほら見て!」
そう言ってリュークは異空間からミノタウロスを出した。
「あらあら、結構大きいわね。ミノタウロスも久しぶりね。ミノタウロスは牛よりも美味しいから私は好きよ。ありがとうねリューちゃん」
「えへへ、どういたしまして!」
「うむ、良い剣筋だったぞ! 完璧な仕留め方だった。攻撃を流したところは完璧だったな」
「うん! あれ? なんで知ってるの?」
「うん? あ、いや、その……今日はミノタウロスのステーキだなリューク! 母ちゃんのステーキは好きか?」
「うん! 好きだよ!」
「あはは、それは素敵だな! ステーキなだけに!」
「もうあなたったら……」
そんな寒い親父ギャグをぶっ放すヴァリーであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます