第4話 伝説の息子の目覚め
魔の森で、フローラとヴァリーが生活して三年。
リュークが生まれてからは一年とちょっとがたった。
このぐらいになると、リュークも一人で歩いて、片言ながら話すことができるようになった。
「リューちゃーん! ご飯よー」
「はぁい」
「リュークは偉いなぁ、しっかり返事できて」
「うふふ、そうね。だけどお乳をあげなくなっちゃったのはちょっと寂しいわね」
テーブルで今日の晩御飯を食べる。
リュークは離乳食を食べている。
魔の森の中には、野菜なども生えているのでそれをすりつぶしたものを食べさせている。
「リューちゃん今日もしっかり食べれて偉いですねー」
「はぁい」
「そうだな、あんまり溢さずに食べれてるよな……。しっかり者だなリュークは」
「うふふ、私に似てね」
「おい、それだと俺がしっかりしてないみたいだろ」
「あら、そんなこと思ってないわよ? 自意識過剰ね、パパは。ねぇリューちゃん?」
「はぁい」
「リュークも答えなくていい!」
夕食が食べ終わり片付けをする。
夕食などはいつもフローラが作っているが、片付けはヴァリーがやることが多い。
家事はしっかりと分担している。
ヴァリーが片付けている間、フローラはリュークと遊ぶ。
「リューちゃん何して遊ぼうか? 積み木かな?」
「まほう!」
「え、魔法? 魔法ね……リューちゃんにはまだ早いかな?」
「まほう!」
「うーん……じゃあ見せるだけよ?」
「『光よ照らせ、光明ライト』」
フローラがそう言うと、リュークの目の前に手の平サイズの光の玉が現れる。
魔の森の夜は暗いので、いつもは家の中の明かりは最低限の明かりしかつけなかった。
そうしないと光に敏感な魔物が寄ってくる可能性あるからだ。
「はい、終わり」
「すごいすごい!」
「うふふ、ありがと。リューちゃんは魔法に興味があるのねー。将来は魔法使いかな?」
「おいおい、男なんだから剣士だろ?」
食器などを洗って戻ってきたヴァリーが言った。
「決めてたろ? 男だったら剣を教えて、女だったら魔法を教えるって?」
「それはそうだけど……」
「まあ、俺とお前の息子だからどっちも出来る可能性はあるが……やはりどっちもやると器用貧乏になる可能性があるからな」
「そうね……魔法剣士なんて言ってるやつをボコボコにした経験は何回もあるわ」
「おいおい怖えな……まあ俺もあるが」
「そういう人は調子乗ってるのよね。『どっちも出来る俺凄い』っていう感じに」
「あー、俺もそんな感じのやつと闘ってボコったわ」
そんな昔のことを二人が話していると――
「『ひかりよてらせ、らいと』」
ちょっと舌が回ってないような言葉が二人の背中から聞こえてくる。
二人がそちらを向くと、息子のリュークがその言葉を唱えていた。
すると、リュークの目の前に光の玉が現れた。
「えっ……?」
「なっ……!」
二人がその光景を見て目を見開いて驚く。
しかしすぐにリュークの目の前から光の玉は消えた。
フローラが出した光の玉よりは小さかった。
しかし、確実にリューク目の前に光の玉は現れていた。
「……今のはリューちゃんが?」
「お前が無詠唱でやってなかったらそうだろうな……」
「まだ……魔力の使い方を教えてもないのに?ありえない……」
「魔法は俺にはわからんが、やはり魔力の使い方を覚えないと使えないのか?」
「そうね。自分の体内にある魔力の循環を感じ取って、それを使って詠唱文を唱えて初めて魔法は使える」
「魔力を感じ取るのは普通はこの歳では……」
「出来るわけない。早くても五歳で魔力を感じ取る練習を始めて、一週間はかかる。私は三時間で終わったけど……」
「それもまたすげえな……だけどリュークは一歳と三ヶ月二十四日だぜ?」
「なんで完璧に覚えてるのよ……。そうね、いくらなんでも早すぎるし教えてもない」
「てことは俺らの息子は……」
「えぇ……そうね……」
二人はリュークの元に行き、フローラがリュークを抱きかかえる。
「天才ってことね!」
「やっぱりそうだよな! さすが俺らの息子だ! そんじゃそこらの奴らとは比べもんになんねぇな!」
「そうね……これなら今から魔法を教えられるかもしれないわ。そしたら三歳くらいから剣を教えて……」
「そしたら魔法剣士になれるかもだな! 調子に乗ってる奴らとは違い、本物のな!」
「そうね! さすが私のリューちゃん! 将来が楽しみね!」
「おいおい、俺らのリュークだろ? 俺の遺伝子も混ざってること忘れるなよ?」
「リューちゃんは今のは光属性だったから、光属性から覚えてみよっか? 私の息子だから多分全属性使えると思うけど、どれが一番得意かな?」
「おい、無視すんなよ……」
こうして、魔の森に住む三人の夜は更けていく――
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