第5話 伝説の息子の成長

 リュークが魔法を初めて使ってから二年ほど経った。

リュークは三歳となった。


 今リュークは、家の外で魔法の練習をしている。

 今日は火属性魔法の練習だ。

まずは身体の中に流れる魔力を感じ取る。

そうすることで、魔法の発動がしやすくなり、強力にもなる。

 そして身体の中の魔力を、指先に集中させる。


「『猛る炎よ、出でよ 照炎ヴァレスト』」


 詠唱文を唱えると、リュークの指先から炎が出る。

普通はランタンぐらいの大きさなのだが、リュークの場合頭二つ分ぐらいの大きさの炎になっている。

それを前にいるフローラに向けて発射する。


 するとフローラも詠唱を始める。


「『水よ、我が手に集え 流水ウォーター』」


 フローラの指先から炎の大きさと同じくらいの、水の塊が出てくる。

そして炎に向け発射。

 衝突と同時に、水が炎を包むように消火。

そして水は少し体積が少なくなるが、その場に漂う。

 少し漂った後、急に地面に落ちた。


「リューちゃん前より炎が大きくなってたわ! 私も少し大きくしないと負けてしまうところだったわ!」

「えへへ、指にね! 集めるのが大きくなったの!」

「そうねー。魔力の循環をしっかり感じ取れてる証拠だわ。偉いわねー」


 そう言ってフローラはリュークの頭を撫でる。

リュークも嬉しそうに目を細めて受け入れる。


 すると横で見ていたヴァリーが近づいてくる。


「よーし、リューク! 昼飯食べたら今度は父ちゃんと剣の練習しようか!」

「うん! いいよ!」

「大丈夫リューちゃん? 今日は朝から魔法の練習していたけど?」

「大丈夫だよ! 剣の練習も楽しいし!」

「それならいいけど……。あなた、くれぐれもリューちゃんに怪我をさせないように」

「お、おう……。なんだよ信用ねぇな」

「あら、剣の練習二日目に加減を間違ってリューちゃんの頭にタンコブ作ったのはどこの誰かしら?」

「うっ……! あれはその……リュークに一本取られそうになったからつい……」

「リューちゃんの上達が想像より良かったからといって……まさか自分の息子に一本取られそうになって、挙句に三歳児の子に本気になるって……呆れてものも言えないわ。かっこ悪い」

「おい、めちゃくちゃ言ってるじゃねぇか。言えないんじゃねぇのかよ」

「大丈夫だよ! 痛かったけどすぐ治った!」

「リューちゃんは良い子ねー。それなのにあなたったら……」

「おかしい……。昔言ってた『あなたったら……』と言葉は同じなのに意味が全然違う」


 そう言いながら三人は家に入ってく。


 そして昼ご飯を食べて、リュークとヴァリーは剣の練習をするため外に出る。

フローラも一緒に外に出た。


「よし、リューク! まずは前と同じ基本の型からだ!」

「うん!」

「まずは俺の後に続いて構えを取れ」


 リュークとヴァリーは木刀を持つ。

そしてヴァリーが構え始める。


「まずは正眼」

 基本中の基本の構え。

相手の喉元に切っ先(剣の先)を向けて構える。

「真っ向」

 剣を振り上げ、相手の額めがけ真っ直ぐ斬り下ろす。

「次、八相」

 剣を真っ直ぐ右耳の横に構える。

「逆袈裟」

 相手の右腹から肩口に斬り上げる。

「逆八相」

 八相の逆で、左耳の横に剣を構える。

「袈裟」

 相手の左肩口を斜めに斬り下ろす。

「正眼、胴斬り」

 基本の型から、相手の胴を真っ直ぐ斬る。

「正眼、抜き胴」

 基本の型から、踏み込んで相手の胴を斬る。

「斬り上げ」

 刀を返し真上に斬り上げる。

「米斬り」

 真っ向、袈裟、逆袈裟、胴斬り、斬り上げをセットに連続でやる。


 ここまでやり、ヴァリーは一度構えを解く。

リュークも一緒に構えを解いた。


「これが剣の……いや、刀の構えだ。基本はこれを覚えてあとは実戦の中でこれをどう生かすか。そしてどう応用するかだな」

「わかった!」

「……うん、リュークは覚えが早くて偉いな。あとは精度を上げるだけだ」


 そしてリュークは今の型を、繰り返し始める。


「やっぱりリューちゃんって覚え早いわよね……」

「そうだな……俺が剣を始めたのは五歳の頃だが、今のリュークのところまでいったのは半年ちょっとはかかった」

「まだ剣始めて一ヶ月よ? しかも三歳で……やっぱりリューちゃん天才だわ!」

「魔法の方もそうか? やっぱり覚えるの早いか?」

「そうね……今のリューちゃんは私の七歳の頃かしら?」

「凄いな……お前七歳の頃から神童とか呼ばれてたんだろ?」

「そうよ。それをリューちゃんは三歳よ。将来がたのしみね」

「本当に魔法剣士になれるな……リュークは」


 そういってる間にも、リュークは剣の型を練習していく。

リュークは、史上最高の師匠二人と共に、その師匠すら驚かせるスピードで成長していくのであった。


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