第10話 SS級
ギルド内の、空気が止まった。
ランク決め玉の言葉に疑問を抱く。
「は、はぁ? ランクはS級までだろ……? なんだよSS級って?」
全員の疑問に思う部分を、三人の男の一人が口にする。
ギルド内のほとんどすべての人が、『SS級』というランクを聞いたことがなかった。
「ラ、ランク決め玉が壊れたんじゃねぇのか?」
「そ、そうだ! そんなランクねぇだろ!」
「いや、SS級は実際に存在する」
男たちが騒いでるところに、低い声が響いた。
声がした方向を見ると、受付カウンターの奥から一人の男が出て来た。
顔に傷跡が大きく入っていて、厳つい印象を受ける大男である。
「ギルドマスター!」
受付嬢のメリーがその男を見て叫ぶ。
「ギルドマスター?」
「ギルドマスターは、一つの街の冒険者ギルドの一番偉い人よ」
リュークが知らないのを察し、アンが小声で教えてくれる。
「ギルドマスターのゴーガンだ。よろしくな、リューク……だったか?」
「こちらこそ、リュークだ。よろしく」
「さて、リュークはとりあえず奥の部屋に来てくれるか?」
「ま、待てよギルドマスター!」
少し空気と化していた男三人の一人が待ったをかける。
「SS級なんて、本当にあるのか!? 皆んな聞いたことねぇよ!」
「ああ、過去に二人いた」
その二人という言葉を聞いて、何人かは察することが出来た。
アンもその中の一人だった。
「まさか……」
「そう、剣神と魔帝だ」
その名を聞いて、ギルド内の全員息を呑み、そして納得した。
確かにその二人ならば、『SS級』という規格外のランクも頷ける。
「じゃあ、このガキはなんでSS級なんだ! 尚更おかしいじゃねぇか!」
「そうだ! やっぱりランク決め玉がおかしいんじゃ――」
「――いい加減にしろ」
男達が騒ぎ出そうとしたところに、ギルドマスターのゴーガンの低い声が響く。
その声は殺気がこもっており、ギルド内のほとんど全員が足を竦ませる。
まともに受けた男三人は、顔を青くして後ずさる。
「『ランク決め玉』は魔帝様が作ってからギルドのランク決めが簡単に、そして正確になった」
「ランク決めを不満に思ったやつがいても、そのランクより上の者と戦って勝った者は一人もいない。例外も一切ない。事実、お前らがそうだっだろ」
その言葉に男三人は何も言葉が出ない。
この三人は昔、Dランクに不満を言って、Cランクの者と戦い、負けている。
こういう事例は多数報告されるが、一回も下のランクの者が、上のランクの者に勝ったという事例はない。
「わかったら黙ってろ」
ゴーガンは三人にそう言い放ち、リュークに目でついて来いと言って、カウンターの奥に消えていった。
リュークもその合図を受け取り、
「ちょっと行ってくるな、アン、アナ」
二人に声をかけて、カウンターの中に入れてもらい、奥の部屋へ。
リュークが奥の部屋のドアを開けると、ソファに座っているゴーガンがいた。
「俺の向かいに腰掛けろ」
そう言われ、リュークはゴーガンの前のソファに座る。
「いきなり悪かったな、呼び出して」
「いや、大丈夫だ」
「……やはりSS級とランク決めされるだけあって、肝が据わっている」
「そうか? 普通じゃないか?」
「普通の人間は、俺の殺気になんかしら反応はするんだよ」
さっきのゴーガンの殺気に、リュークだけが全くの無反応だった。
否、反応はしていた。
しかし、その反応は一瞬で戦闘準備に入るというものであり、ゴーガンはその反応が見えていなかった。
戦闘準備に入った瞬間すら見えないという大きな実力の差が二人にはあった。
「あんぐらいの殺気、日常茶飯事だったからな……てかあれより全然強いのもあったし」
「……言うことが違うなぁ、流石だぜ」
「さて、呼び出したのは二つの案件があるからだ」
早速、ゴーガンが本題に入る。
「一つは、お前のさっきのランク決めの結果。冒険者ギルドの本部や他の街の冒険者ギルドに情報が送られている」
「へー、そうなんだ」
「あぁ、『ランク決め玉』は冒険者ギルドに一つずつあり、Cランク以上の者が現れたら、自動的に『ランク決め玉』が情報を他の玉に送ることになっている」
「本当に便利だなぁ、あの玉」
「だから今、本部や他のギルドで大騒ぎだろうな。この街でSS級という剣神と魔帝以来のランクが現れたんだから」
そう言ってゴーガンは他のギルドのギルドマスターの驚いた顔を想像して、豪快に笑う。
「まあこれが一つ目に伝える案件だ。C級以上になった奴ら全員に伝えてる」
「じゃあ、もう一つは?」
「……こっちはB級以上のランク全員必須なことなんだが……」
ゴーガンは今までと違い、少し緊張な面持ちで話を切り出す。
「お前さん、人を殺したことは?」
「ん? ないけど……」
「そうか……まあ普通はないよな」
「え、B級以上は人を殺さないといけないのか?」
「んー、言い方が悪いがそうだな」
「え、なんで……?」
「まあそういうわけで、お前にはとある依頼を受けてもらわないといけない」
「依頼 ……?」
「盗賊狩りだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます