第11話 盗賊狩りへ


「とうぞくがり?」


 リュークはそう聞き返した。


「盗賊を知らないのか?」

「ああ、知らないな」


 リュークは両親と共に、森の中でずっと生きてきたので世間のことはほとんど知らない。

なので、『盗賊』という単語を聞いたのも初めてだ。


「盗賊というのは……人を殺したり脅したりして、強奪行為をする輩共だ」

「それは人か? 魔物じゃなくて?」

「ああ、人間だ。まあ獣人や魔人、エルフやドワーフの可能性もあるが……」

「人が人を殺すのか? なんで?」

「……金がないとか、職を失ったなどで盗賊になるやつらがいるんだ」


 ゴーガンはリュークの世間知らずに少し驚いていた。

盗賊というのを知らないやつも普通はいない。

 そして、同じ種族同士の者が殺し合うのも不思議に思ってる様子だった。


「そうなんだ……そしたらお金をあげたり、仕事をあげたりすればいいんじゃないのか?」

「そう簡単にはいかねぇんだよ。簡単じゃねぇから盗賊になっている奴らもいるんだ」

「……で、そいつらを殺せと?」

「そうだな、盗賊落ちしたやつは全員死刑になる。だからその場で殺しても大丈夫、というか盗賊に会ったら殺さないと逆に殺される」

「……話し合いはできないのか?」

「普通は出来ない、だいたいの盗賊は有無も言わさずに殺しにかかってくるからな」


 リュークはやはり不思議に思う 。

どうしてお金が必要なのか?

どうして仕事が必要なのか?

どうして盗賊落ちした人は殺さないといけないのか?


 しかし、ゴーガンの話は進んでいく。


「B級以上のやつは、物資を運ぶ護衛などをすることもある。その時に盗賊が襲ってきたりする。その場合、盗賊を殺さないとしっかりと護衛することが出来ない」

「動きを封じればいいんじゃないのか?」

「まあそうなんだが……物資を運んでいる人は商人で、戦闘は出来ない。その人たちを守る為には殺すのが確実なんだ。その人たちを完璧に守りながら盗賊を無力化出来れば問題無いが……」

「じゃあ、問題無いな」

「なっ!? 出来るのか!? ま、まぁそうだよな、SS級だもんな。そんぐらい出来るか……」


 リュークと話していると、リュークがSS級になるとは思えないほど世間知らずだったので、ランクを忘れていたゴーガン。

 しかし、実際は自分より数段上の実力者だということに気づく。


「まあ、無力化出来るならそれでいい。それでそいつらを街に連行すればいい」

「ん、分かった。で、俺の初依頼は?」

「そうだな……物資を運ぶ護衛ではなく、普通に盗賊狩りという依頼だ」


 リュークの初依頼は次の内容であった。


 ここの街、ヴェルノから隣街のチェスターに行くには山を越える必要がある。

よくこの二つの街は、物資を運び運ばれていた。

 しかしその山には、最近盗賊が住み着いてしまった。

ここ数年、物資を運んでいる時に襲われ、商人達が殺されて物資を奪われる事件が相次いでいる。

その盗賊達も中々の強者達で、A級の三人組が護衛でいても襲われ、二人が殺されていた

 なので、リュークへの依頼はそこの山へ行って盗賊狩りである。


「こんな感じだ。分かったか?」

「ん、分かった。人数とかわかってるのか?」

「少数精鋭らしい。正確な人数はわからんが、十人前後。多い盗賊団だったら百人以上いるからな」

「そうなんだ、まあなんとかなりそうだな」

「そして生き残ったA級冒険者によると……全員女らしい」

「女? そうなのか?」

「あぁ、女でありながらその強さは計り知れないものがある。いくらSS級といっても、初依頼だ。気をつけていけよ」

「ああ、わかった。じゃあ、もう行こうかな」

「今から行くのか!?」

「え、そのつもりだけど? まだ昼過ぎたくらいだし……」

「そんなに早くは無理だと思うが……まぁ、しっかり準備して行ってくれ」

「わかった。ありがとな」


 そう言って、リュークは部屋を出て行った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る