第18話 盗賊団捕獲
一方、その頃アン達は――
「ねぇ、そろそろ私たちもリュークさんのところに行った方がいいんじゃない?」
「そうだね……」
「お兄ちゃん大丈夫かな……?」
先程捕まえた盗賊達を見張って、リュークの帰りを待っていた。
盗賊達は、リュークの魔法によりいまだに拘束されたままである。
盗賊達は、魔法を避けようとしたところを拘束されているので、皆んな珍妙な格好で捕らえられている。
「ネネとルルだけでもリュークさんについて行かせれば良かったかな……」
そう言いながら、メリーはネネとルルの頭を撫でる。
ネネとルルも気持ち良さそうにメリーに鼻をこすりつける。
「リュークなら大丈夫よ、メリー。なんたってSS級よ?リュークは」
「うー、私もお兄ちゃんについていけば良かったかな……」
「アナまで……逆に私達が行ったら足手まといよ」
「お姉ちゃん、そうかもしれないけど……」
アンは、リュークの強さを知って自分が足手まといになると自覚している。
アナも、そのことに納得はしているが、やはりリュークが心配なのか、さっきからそわそわして落ち着かない。
「ふん、いい気になるのも今のうちさ」
突然、盗賊達のうちの一人が三人にそう言い放つ。
「うちのボスは、実力もさることながら、頭が良いのさ。私達の盗賊団が今までやってこれたのも、ボスの頭のキレがあったからさ。あんな化け物、ボスにかかれば騙し討ちで一発さ」
「っ! あんた……」
「ふん、なにさ」
「語尾に『さ』多くない?」
「そこツッコむところじゃねぇさ!?」
「いや、『じゃねぇさ』はおかしくないかしら?」
「お姉ちゃん、ふざけてないで」
アン達に話しかけた女盗賊は、息を切らししながら話し続ける。
「ふん、ふざけてられるのも今のうちさ! もうすぐボスが他の仲間を連れて私達を助けに来るさ!」
「……本当に大丈夫かな、リュークさん……」
「メリーも心配しすぎ、大丈夫よ」
アン達が話していると、ネネとルルがまず最初に異変に気付いた。
そしてメリーが、二匹から話を聞く。
「え、本当に!?」
「どうしたのメリー? ネネとルルが何かに気付いたの?」
アナがそうメリーに問いかける。
「何人もの人の臭いがこっちに近づいてるって!」
「何人も!? ってことはもしかして……」
「はっ! やっぱりうちの盗賊団の仲間達さ! あの化け物はボスに負けたのさ!」
メリーの言葉に、盗賊の女が勝ち誇ったかのように笑う。
「だけどネネとルルから聞いたけど……様子がおかしいの」
「様子ってなに?」
アナがそう問いかける。
「ネネとルルの鼻が利く距離の範囲内にいきなり入ったみたいなの……なんでもいきなりそこに現れたように……」
「いきなり現れた……? それってもしかして……」
アンが何かに気付いたように呟く。
「あっ! お姉ちゃん、それってお兄ちゃんの……」
アナもそれに続いて気付いた。
そして、アン達の背後から声が聞こえる。
「よっ、待たせたな」
アン達が一斉に振り向くと、そこには片手を上げて笑っているリュークがいた。
「お兄ちゃん!」
いち早くアナがリュークの元に駆け寄り抱きつく。
「心配かけたな、アナ」
「ううん! 信じてたよお兄ちゃん!」
「さすがねリューク……というかこの人数を一気に連れてくるのね……」
アンがリュークが連れてきた盗賊達を見てそう言った。
リュークの後ろには魔法で連れてきた盗賊達が十数人いた。
リュークの魔法、『次元跳躍ワープ』で連れてきていた。
この魔法は、リュークが触ってるものも一緒に移動するので、盗賊達を拘束した土魔法の枷を繋げて、リュークがそれに触れれば一斉に移動出来る。
「ボス! まさかボスまでもが……」
さっきまでアン達に話しかけていた女盗賊も、ボスや仲間が捕まっているのを見て驚愕している。
「はぁ……すまないねあんた達。そこの冒険者にやられたよ」
「ボスほど強い人が、いったいどうやって……」
「まさか卑怯な手を使って……」
今までアン達に見張られていて黙っていた女盗賊達も、口々にそう言う。
自分達のボスの強さを知っている故に、目の前で拘束されているのが信じられないのである。
「何も卑怯な手は使われてないよ……ただただ真っ向から叩きのめされたのさ」
「しかも、私のプライドをズタボロにされるような勝負だった……いや、勝負にもなってなかったね」
ボスの言葉に、
「そんな、ボスまでもが……」
「いったいどんな……」
そう女盗賊達は呟く。
「何も特別なことはされてない……ずっと私の魔法を相殺されたのさ」
「魔法を相殺……!?」
「私の魔力が尽きるまでね……これでも魔力量には自信があったんだけどね」
ボスの言葉に盗賊達は唖然とする。
魔法の相殺を狙って続けるというのは、相手が放った魔法の魔力量を瞬時に判断し、それと同じ魔力量の魔法を放てばならない。
当然、そんな至難な技普通の魔法使いには出来るわけがない。
盗賊達は、目の前でアン達と笑って話しているリュークという男の、呆れるほどの強さを今更ながら思い知ったのである。
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