第70話 ヴェルノ到着
リュークとメリーが王都サザンカを出発してから二日。
道中は特に何もなく、魔物が出てきたらリュークが倒しその魔物を食料にして無事にヴェルノの街に到着した。
「ようやく着いたか……」
リューク達はヴェルノの街に着いて門番の人と話す。
「おお、リュークじゃないか! メリーちゃんも! 帰ってきたのか!」
「ヴェルノの街に用事があってな」
「そうなのか? アンちゃんとアナちゃんなら東の森に依頼受けて行ったぞ」
「そうか、二人はしっかり鍛錬してるのか」
門番は毎日アンとアナがここを出て東の森に行ってるのを見ていた。
「顔出してやればどうだ?」
「今は少し急ぎの用だから、後で会うことは出来るだろう」
「そうですね。夜になったら私の家に行けば会えますから用事を急ぎましょう」
そう言ってリュークとメリーは手続きをしてヴェルノの街に入っていった。
「とりあえず……どうする? ギルドに向かうか?」
「そうですね。一応ギルドマスターに話を伺いましょうか。少しでも情報が持っていればいいのですが」
リューク達はネネとルルに乗ったままギルドに向かい、商店街を抜ける。
そしてギルドの前でネネとルルには待ってもらい、中に入る。受付には珍しくギルドマスターが書類仕事をしていた。
「あれ……ギルドマスター、何やってるのですか?」
「あぁ? おっ、メリーじゃないか! 助けてくれ!」
ギルドマスターのゴーガンは顔を上げてメリーを見ると立ち上がってカウンターを出ようとしたが――他で仕事をしている受付嬢達に睨まれて立ち止まる。
「ギルマス……? 仕事をしてください」
「い、いや……メリーが帰ってきたから大丈夫だろ?」
「ギルマス――いいからやれ」
「はい……ごめんなさい」
隣に座ってる受付嬢に注意されて、目にも止まらぬ速さでゴーガンは席に座り仕事を再開する。
「あの……先輩、ギルドマスターはなんでこうなってるのでしょうか?」
ゴーガンを諫いさめて仕事に取り組ませた女性に問いかけた。
「メリーちゃんが王都に行ってから書類仕事が増えてね……その中私達に仕事押し付けて魔物の解体ばっかやっていたギルマスを私たち全員でとっちめて無理やり仕事をさせてるのよ」
「さ、さすがです先輩方……」
いつもギルマスのゴーガンの仕事を押し付けられていた受付嬢達も我慢の限界が来たようだった。
「くっそ……B級以上の元冒険者が十人がかりぐらいで一人に対して本気で向かってくるか!? しかも何人かは俺と同じ元A級冒険者だしな!」
「黙って仕事をしてくださいギルマス」
ペンを右手に持ち書類と睨み合ってるゴーガンは悲鳴を上げていたが、無情にメリーの先輩はギルマスに命令する。
「それでメリーちゃん、王都の仕事は終わったの?」
「あ、いえ。王都の仕事でヴェルノの街に来なければいけない案件があったので……」
「そうだったの? 手伝えることがあるなら言ってね」
「あ……では聞いてもいいですか?」
メリーはその先輩とギルマスに詳しい事情は言わないようにしながら、この街に調合師がどれだけいるか、店はどこにあるかなど聞いた。
「そんなの俺にわかるわけないだろ」
「威張ることじゃありませんよギルマス。そうね……私もそこまで知らないけど、数店舗は知ってるから教えてあげるわ」
「あ、ありがとうございます先輩!」
その先輩はヴェルノの街の地図を持ってきて、メリーとリュークに調合師がいる店舗を説明する。
二人はカウンターに前のめりになりながら真剣に聞いていると、リュークは一人だけ知ってる調合師の人物を思い出した。
「ここの店舗の調合師は知ってる。何度か利用したし、素材を引き取ってもらった」
「そうなんですね。では私は反対の方向にいる調合師の方に話を伺ってみますね」
「わかった。じゃあ俺はここに行ってみるか」
「先輩、ありがとうございます」
「大丈夫よ、お仕事頑張ってね」
リュークとメリーは先輩に礼を言うと、二人はギルドを出て別行動をとる。
リュークは街の商店街の方向に向かい、何回も通ったお姉さんの店舗に向かう。
街中を通り、その店舗の中に入ると一人でカウンターにいて何か仕事をしているお姉さんがいた。
扉を開けた時に鳴ったベルの音で顔を上げるお姉さん。
「いらっしゃいませ~……ってあれ、リューク君? 久しぶりだね、王都から帰ってきたの?」
「ああ、用事があったからな」
「そうなんだ。アンちゃんとアナちゃんには会ってあげた? あの子達、毎日ここに素材持ってきてくれるんだよ」
「そうか、まだ会ってないが……それより今は用事を済ませないといけないんだ」
お姉さんはリュークのいつもの雰囲気とは違い、真剣な眼差しに応えるようにゆっくりと口を開く。
「……用事って、私に?」
「ああ、単刀直入に聞こう――」
リュークは一呼吸置き――そして問う。
「――お姉さんの名前って何?」
……気が抜けるような脱力感に、ギリギリ耐えたそのお姉さんはリュークの真面目な顔を見ながら苦笑いをしている。
しかしお姉さんの苦笑いを見ても気にせずにリュークは続ける。
「いや、一ヶ月ぐらいお姉さんと付き合ってきたけど、名前聞いてなかったからな。この後もお世話になると思うし、これから話す際に名前知らないと困ること多いと思うしな」
「リューク君は天然だな~……」
「初めて言われたな」
お姉さんは脱力感をなんとか立て直して質問に答える。
「フランよ。改めてリューク君、よろしくね」
「ああ、よろしくフラン」
リュークの壮大な天然ボケをかましてから、ようやく本題に入る。
「さてフラン、さっきも言ったがここには用事があってきたんだ」
「良かったよ、私の名前を聞くために王都から帰ってきたわけじゃなくて」
「名前だけを聞くためには二日もかけて戻っては来ないわ。早速本題なんだが――」
「呪いを解ける薬の作り方って知ってるか?」
リュークのその言葉に、今まで笑っていたフランの顔が一気に凍りつく。
「……」
「フラン? どうしたんだ?」
「……えっ? あ、ごめんね。ボーッとしちゃった」
「……なんか知ってるのか?」
フランのその態度を見て不審に思ったリュークがそう問うと、フランは顔を一度俯かせてから答える。
「……リューク君はなんで解呪薬かいじゅやくについて知りたいの?」
「かいじゅやく……? それが呪いを解く薬か?」
「そうだよ……なんで?」
「……まあ、フランになら言っても大丈夫だろ。実は――」
リュークは今回王都に直接依頼として呼ばれた理由を話し、王妃様の呪いのことも話す。
「そうなんだ……だから解呪薬のことをね……」
「そうだ。知ってるんだったら教えて欲しいんだ」
リュークがそう問いかけると、フランは少し悩んだ後に答える。
「……うん、いいよ」
フランはリュークの眼を見ながら話を続ける。
「昔、魔帝フローラ様がこの街で解呪薬を作ったって話、知ってる?」
「ああ、それを聞いたからヴェルノに戻ってきたんだ」
「実はね、魔帝様が素材を調達してきて、私のママが調合したんだ。人族で初めて解呪薬の作製に成功したのはママなの」
「すごいな、フランのお母さん……」
「ふふっ、そうでしょ? それでね、実は――」
フランは一呼吸を置くと、目を伏せて当時のことを思い出しがら言った。
「――私が呪いにかかってたんだ」
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