第36話 次なる決闘へ


 練習場が大歓声で包まれてる中、リュークは異空間に木刀を入れる。


 興奮が冷めやらぬままの練習場を後にする。


 ギルド内に戻ると、まだほとんどの冒険者が練習場にいるのかガランとしていた。


 しかし、アン達は戻ってきていてリュークを見ると寄ってきた。


「リューク! 流石ね、圧倒していたわ」

「お兄ちゃんカッコ良かったよ!」


 アンはリュークの側に立って見上げる。

アナはいつものごとくリュークの胸に飛び込んだ。


 リュークも腰辺りに抱きついてくるアナを受けとめ、頭を撫でる。


「おう、ありがとうな」

「リュークよ、私達もいることを忘れていないか?」


 リュークが後ろを振り向くと、アメリア達が立っていた。


「忘れてねえよ、どうだった? さっきの戦い」

「どうもこうも……お前が本当に規格外ということを再確認したよ」

「SS級というものを理解出来ました。リューク様、お見事でした」

「流石だね〜、見てて楽しかったよ〜」

「……」

「そうか、サラはどうだった?」


 黙っているさらにリュークは問いかける。


「あんた……自分の木刀に魔法付与を自分でしてたってわけ?」

「魔法付与……ああ、あれか。まあ自分でしてたよ」

「そんなの……認められないわ! ありえない!!」


 サラはリュークをキッと睨み言葉を続ける。


「ルーカスという奴が持っていた魔剣、あれは熟練の魔法付与士が三年以上かけないとあんな性能は発揮されない! それを、自分がその場でかけた魔法付与で防ぐなんて不可能だわ!」

「そんなこと言われてもな……それを俺はやったからな、不可能じゃないってことだろ」

「くっ……なんかタネがあるはずよ! さっきの木刀を貸しなさい!!」

「ああ、いいけど」


 リュークは木刀を出して、サラへと渡す。

 サラはリュークが全く躊躇無く渡したのに驚くも、木刀を奪い取るように手に取って眼を見開き木刀を上から下へと凝視する。


「……魔法付与の気配がない……え!? あんたこの木刀! どこで手に入れたの!?」

「それは父ちゃんが作った木刀で……って近い近い!」


 サラは詰め寄るように顔をリュークに近づける。

顔が近くなったことにすぐに気づき、顔を赤くしながら離れる。


「こ、これ! 材料になってる木が……確か魔の森の最奥地でしか生息していない『カヌギの魔樹』。昔、剣神様が魔の森から採ってきたと言われる……」

「それは確か、魔力を吸って成長する樹ではなかったですか? 地中や大気中の魔力を根や葉から吸い、ほぼ無限に成長し続けるといわれていますね」

「へ〜、そんなのあるんだ〜。さすがテレシア、博識だなぁ〜」


「この木刀なら魔法付与はしやすいかもしれないわね……やっぱりあんたの魔法付与はインチキよ!」

「サラ、それでもリューク様はあの戦いの中魔法付与をし続けたのです。それがどれだけ難しいか貴女がわからないわけないですよね?」

「うっ、テレシアお姉様……」


 サラはテレシアにそう言われて言葉を詰まらせるが、すぐに気を取り直しリュークに告げる。


「そ、それでもあたしの方が魔法は上よ! あんた、私と勝負しなさい!!」

「はあ?」

「あ、私もやりた〜い」


 サラの勝負宣言にエイミーが手を挙げて自分もリュークと戦いたいと立候補した。


「サラ一人じゃ多分敵わないから〜、良いよね〜? テレシアもやるでしょ〜?」

「なんで私まで……」

「そんなこと言って〜、戦やりたいと思ってたでしょ〜」

「……そうですね、姉妹三人で私だけ仲間外れは許しません。戦うなら姉妹三人で」

「無視された〜」


 リュークの意思関係無く戦うことが決まっていく。


「この後すぐ! 場所はここを出て東にある森の前! あたし達姉妹は先に行って待ってるわ!」

「なんでサラ、貴女が仕切ってるんですか?」

「リューク君、また後でね〜」


 三人はそう言ってギルドを出て行ってしまう。


「……無理やりすぎね?」

「すまないリューク、私も怒涛の展開過ぎて止められなかった」


 アンとアナもポカーンとした表情で今までの経緯を見ていた。

アンとアナはハッとして何とか戻ってきて、アンはアメリアに問いかける。


「だけど、あの人達ってランクは?」

「全員がA級だ」

「強いけど……お兄ちゃんには敵わないんじゃないかな? ほら、アメリアもS級でお兄ちゃんには敵わなかったし」

「……どうだろうな、わからんぞ」

「え? なんで?」


「あいつら姉妹、三人でなら私も負けるぞ」

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