第38話 雷魔法
「はぁ……はぁ……どうよ、倒したんじゃない?」
サラは肩で息をしながら、土煙が上がり何も見えなくなっている目の前を見渡す。
『雷撃ライゲキ』
ユニーク魔法、雷魔法である。
その大電流によって発生する熱は、魔物を内側から焦がし、壊死させて絶命させる。
魔物や人に当たればほぼ絶命は免まぬがれない。
「サラの雷魔法は流石だね〜、倒れなくても結構なダメージは……ん〜、なにあれ?」
土煙が晴れていくと、そこにはドーム状に出来たものがあった。
雪で作る『カマクラ』のようなものが土で出来た感じである。
そしてそのドーム状のものが崩れ――中からリュークの姿が見えた。
「あれを受けて……無傷ですか……っ!?」
テレシアもこれには驚きが隠せない。
「なんで……いったいどうやって!?」
サラは絶対の自信があったのか、リュークの姿を見て絶望したような顔で問いかける。
「雷魔法……凄い攻撃だったぞ。まあ、見てわかる通り自分の身体を覆うように土で守ったんだ。雷が通らないように分厚くしたしな」
「そんなことで……っ! いや、地面にあんたは足が付いてたはず! 地面には電撃ライゲキは通るわ!」
「ああ、だから足下に氷を張った」
リュークの足下を見ると確かに氷が張っていた。
リュークがちょうど乗れるくらいにしか張っておらず、よく注意して見ないと見逃してしまうほどだった。
「はぁ!? 氷は電気を通すわ! 少しは電流が弱くなるかもしれないけど無傷で済むはずがない!」
「いや、氷は電気を通さないぞ」
「通るわよ! 確認したことあるから間違いない!!」
「普通の氷はな。ただこの氷は純水で作った氷、不純物が全く無い」
「不純物が……無い……?」
「ああ、そうだ。水が電気を通すのは中に水では無い物が入ってるからだ。それをゼロにする、すなわち純水にすると電気は通さない。そして純水を凍らせたものは電気を通さないんだ」
リュークが一つ一つ丁寧に説明する。
その言葉にサラはもちろん、テレシアやエイミーも目から鱗が落ちたかのように目を見開く。
「なんであんたが……そんな電気について詳しいのよ!! あたしは……っ!」
サラは悔しそうに下唇が嚙み切れるくらいに噛んでいる。
顔は俯いて眼は潤んでるように見える。
「なんでって……そりゃあ――」
リュークが左手の掌てのひらを広げ魔力を込める。
すると――掌の上にバチッと音が鳴り、電気が迸ほとばしる。
「――俺もユニーク魔法の雷魔法を使えるからな」
「そんな……っ!」
サラは驚愕し、膝をつきそうな脱力感に襲われるがなんとか耐える。
ユニーク魔法とは――
基本属性の火水風土光闇とは違い、扱える人は限られる。
数あるユニーク魔法だが、例え一番多くの人が使えるユニーク魔法でも、十万人に一人くらいにしか発現しないものである。
肉体強化魔法も十万人に一人くらいのユニーク魔法である。
そして、雷魔法――これは更に少なく百万人に一人にしか発現しない。
「確かリューク様は……アメリア様と同じように時空魔法も使えると聞きましたが……」
テレシアの言う通り、リュークは時空魔法――数億人に一人にしか発現しないと言われる魔法も使える。
「本当に……化け物だね〜」
「そんなことって……私の雷魔法が……」
エイミーは引きつった笑顔でもう余裕など全くない顔付きでリュークを睨んでいる。
サラはまだ立ち直れないのか、俯いてぶつぶつ言っている。
「さあ、続きをしようぜ」
茫然自失となってる三人に、リュークは薄く笑いながら無情にもそう告げる――。
「お兄ちゃん、すっごい悪者感出てるんだけど」
「そうね、ヒーローの前に立ちはだかる最悪の敵って感じね」
「お前ら……リュークの友達なんだよな?」
外野で三人がそう話してるのは戦ってる最中の四人には聞こえていなかった。
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