第14話 道中

 それから四人と二匹はすぐに出発した。


 ネネとルルの速さはリュークの想像以上で、時速は五〇キロは出てるようであった。

これなら一時間と少しで山に着くだろう。


 しかし、速さが出るということはそれだけ風の抵抗があるということだ。

リュークはメリーの後ろにいるので、少ししか感じないが、メリーには直に風の抵抗を受けてるだろう。

 それはルルに乗ってる、アナの前にいるアンも同じはずだ。


 なので、リュークは魔法を使う。

ネネとルルの三メートルぐらい前に、風の盾のようなものを作り風の抵抗をネネ達に当たらないように逸らす。


「……あれ? 急に風が来なくなった……」


 風の抵抗を必死に耐えていたメリーが急にそれが無くなったことに驚く。


「俺が魔法で風を逸らしてるからな」

「え、そんなの出来るんですか?」

「まあ結構繊細な魔力操作が要求されるが、出来ないことじゃないよ」

「そうなんですか……あ、ありがとうございます」

「おう」


 リュークが自分のことを考えて風の抵抗を無くしてくれたことに、メリーは驚いたがやはり嬉しい。

 そして、メリーも魔法使いだからわかるが、ネネの前に風魔法を無詠唱でやり、繊細な魔力操作をずっと維持し続ける精度と、その魔力量にも驚いた。


 ネネは風の抵抗が無くなったので、恐らくさっきより速度が出てる。

時速七〇キロは出てるだろう。

 そしてネネと並走しているルルにもリュークは魔法を使っているということだ。

こんな高速で移動している魔獣の目の前に、繊細な魔法を維持し続けることがどれだけ大変か。


「やっぱり凄いですねリュークさん……さすがSS級です」

「ん? まあ、誰でも練習すれば出来るぞ」


 メリーが褒めても、どれだけ凄いか分かってなさそうなリュークであった。


「そういえば……」

「何ですか?」

「メリーは何級なんだ?」

「え……? 私、受付嬢ですよ?」

「だけど冒険者もやってるんだろ?ただの事務の仕事にしては、メリーは強過ぎる」


 リュークはメリーの魔力を感じ取り、感じた限りアンやアナよりかは断然に強いことが明らかであった。


「凄いですねリュークさん……そんなのも分かるんですか」

「まぁ大体だけど」

「……私のランクは、B級でした」

「過去の話なのか?」

「はい、冒険者ギルドの受付嬢になるにはB級以上じゃないといけないんです」

「へー、そうなのか。何でB級以上なんだ?」

「やはり冒険者は血の気が多い方がいっぱいいますからね。受付嬢が弱いと危ないんですし、ギルド内で暴れてる 人達を取り押さえる必要もありますので……」

「必然的に強くないと務まらないと……だからB級以上か」


 リュークはギルド内に入った時に魔力を感じ取った結果、ギルドマスターの次に強い人達が受付嬢であったのを思い出す。


「だから女性にとっては、冒険者ギルドの受付嬢は憧れなんですよ! 強くてかっこいい人がなれる職業だから!」

「強くてかっこいいね……」

「あ、リュークさん、私はかっこよくないとか思ってますね? まあ、自分でもかっこいいとかは思わないですけど」

「まあそうだな、メリーはかっこいいよりは可愛いだろ?」

「え!?」


 リュークの言葉にメリーは赤面する。

今まで生きてきて、ほとんど言われたことのない言葉にメリーは動揺を隠せない。


「そ、その……ありがとう、ございます……」

「ん? どういたしまして?」


 リュークも何故礼を言われたのかわからなかったが、とりあえずそう返した。


「リュークさんも……その、かっこいいですよね?」

「ん? そうか? 自分でもよくわからないけど」


 メリーの言う通り、リュークは顔立ちは整っている。

両親のヴァリーとフローラがどちらも美男美女であったため、リュークも必然的にそうなったのであろう。


「リュークさんは多分……これから凄いモテると思いますよ。SS級で実力もあるし」

「んー、よくわからないけど」

「特に受付嬢の人達にすごい注目されると思います。受付嬢は自分が強いから、相手には力を求めない人と、逆に自分より強い人じゃないとダメっていう人がいるんですよ」

「そうなのか?」

「はい、後者の人の方が多くて、理想が高くなってしまうので彼氏とかいない方が結構多いんですよね……」


 そう考えると、リュークなんてとても優良な物件である。

歳は十二歳とまだ少し幼いが、雰囲気は落ち着いていて顔立ちは整っていて、何より剣神と魔帝以来のSS級である。

 受付嬢なら誰もが狙うといっても過言ではない。


「メリーも彼氏ってのはいないのか?」

「え? あ、その……そうですね。私も出来たことありません……。だ、だけどそれは自分より強い人がいなかったとかじゃなくて、良い人がいなかったとかでその……」

「ん? どうした?」

「な、なんでもありません!」


 自分が強い人じゃないとダメな人、なんて思われたくないと思ったメリーは弁解しようとしたが、リュークは意味を分かってなさそうなので安堵した。



 ――その頃、ルルに乗ってる方では、


「ねぇお姉ちゃん、あっちからラブコメの波動を感じるよ」

「え、アナ何言ってるの? らぶこめ? はどう?」


 アナが少し意味わからないことを言っていた。

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