第69話 新天地

 ぼくと13匹の猫達は、周辺調査しゅうへんちょうさをしながら、何日も移動生活を送った。


 そしてついに、集落しゅうらくかまえる条件がそろった、新天地しんてんち(新しく活動する場所)を見つけた。


 しかし、本当に安心して暮らせる土地かどうかは、暮らしてみるまで分からない。


 暮らしているうちに、後から問題点が見つかることも十分じゅうぶん考えられる。


仮決定かりけってい」として、ここで暮らしてみようということになった。

   

 本格的ほんかくてき集落しゅうらくかまえるのは、安全が確認されてからってことで。


 猫達は、「やっと、新しい集落しゅうらく辿たどけた」と、喜んでいる。


「これでもう、ケガした猫を運ばなくて済むニャニャ」


「いつでも、安心してお昼寝出来るニャ~ン」


「毎日、移動する生活とも、おさらばニャオ」


 移動型民族生活は、猫達にとって、かなりのストレスだったようだ。


 もともと猫は、環境かんきょうの変化に弱い動物らしい。


 昔から、「犬は人に付き、猫は家に付く」と言われている。


 犬は飼い主を愛し、飼い主との関係を大切にする


 猫は特定の場所を愛し、自分が安心出来る環境かんきょうを大切にする。


 猫は縄張なわばり意識が強く、環境かんきょうに変化があると落ち着かなくなり、強いストレスや不安を感じるという。


 猫が安心出来る、暗くてせまい場所を確保かくほ出来ないと、ストレスで睡眠不足すいみんぶそくになる。


 実際に、睡眠不足すいみんぶそく原因げんいんで、体調をくずす猫が何匹もいた。


 この新しい集落で、たっぷり眠って、移動生活で疲れ果てた心と体をいやして欲しい。


 新しい環境かんきょうれるまで、少し時間がかかるかもしれない。


 だけど、いつの日か、ここが猫達にとって、安心して暮らせる場所になれば良い。



 特に、集落のおさは大喜びで、めちゃくちゃ感謝された。


「仔猫のお医者さん、我々をここまで連れて来てくれて、本当に感謝しかないナォ。これでようやく、新しい集落を作れるナォ」


「ミャ」


 どういたしまして。


「仔猫のお医者さんも、たくさん頑張がんばって疲れたナォ?」


 確かに、ぼくも疲れがたまっています。


 お言葉に甘えて、しばらく、のんびりさせてもらいますね。


「もちろん、いくらでもゆっくりしてナォ」


 そう言って、集落のおさはニッコリと笑って、ぼくの頭をでた。


 ぼく達家族は、移動疲れがえるまで、この新しい集落で暮らすことになった。

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