第95話 昆虫食

 ※虫を食べる描写びょうしゃがありますので、苦手な人は注意※


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 冷たい雨に打たれながら、食べられそうなものを探す。


 しかし、強い雨がっているせいか、動物はどこにもいない。


 ネズミ1匹、見つからなかった。


 何かないかと、草をけてみれば、昆虫こんちゅうや何かの幼虫ようちゅうが、草の裏や枯れ葉の下でかくれんぼしていた。


 うわっ、虫……虫かぁ……。


 お父さんとお母さんは、美味しそうにバリバリ食べていたけど。


 どう見ても、食欲がわかない。


 だって、虫だよ?


 虫を見て、「美味しそう♡」って大喜びする人がいたら、悪いけど、ドン引きするよ。


 昆虫こんちゅうが大好きなクラスメイトもいたけど、さすがにアイツも食べないだろう。


 昔から、「イナゴの佃煮つくだに」ってのがあるけどさ。


 美味しいらしいけど、イナゴまるごとそのまんまで、見た目がエグい。


 せめて、虫の形を分からなくしてくれたら、食べられたかもしれないのに。


 人生経験として、ひとつくらい、食べておくべきだったのかな?


 しかも今は、なまで食べるしかない。


 生き抜く為には、食べられるものはなんでも食べなきゃ。


 猫に生まれ変わった今なら、虫も美味しく食べられるかもしれない。


 食べる前に、ひとつずつ『走査そうさ』して、食べても大丈夫かどうかを確認かくにんする。


 虫によっては、毒を持っていたり、寄生虫きせいちゅうがいたり、病原体びょうげんたいを持っていたりすることがあるからね。


 毒持ちの虫や病気持ちの虫は、生かしたまま元の場所へ戻すキャッチアンドリリース


 ねんの為、虫下むしくだしや抗菌作用こうきんさようがあるヨモギも、一緒に食べておこう。 


 なるべく、虫の姿を見たくないので、目をつぶって、口へ入れてみた。

   

 エビをからごと食べているみたいな、バリバリした歯応はごたえで、わりと美味しい。


 う~ん……これはこれで美味しいけど、すすんで「食べたい!」っていう味じゃないなぁ。 


 今は、ワガママを言える状況じゃないから、我慢がまんして食べるけど。 


 やっぱり、お肉が食べたい。


 虫とヨモギを食べたら、そこそこおなかはふくれた。


 あとは、鳥の巣穴すあなへ戻って、雨がむのを待つしかない。


 鳥の巣の中で、丸くなってねむる。


 せまくて薄暗うすぐら巣穴すあなの中にいると、とても安心する。


 でも、ひとりぼっちで寝るのは寒いし、とてもさびしい。


 いつものように、お父さんとお母さんにはさまれて、ふわふわもふもふの温かい猫毛にもれて眠りたい。


 お父さんとお母さんに、会いたい。


 雨がめば、川を渡って、ふたりに会いに行けるのに。


 早く、まないかなぁ……。

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