第22話 絶対強者

 狩りに行きたくても、ひとりでは行けない。


 かといって、親猫達が起きるまで待っていられる余裕はない。


 とにかく、仔猫のぼくには時間も体力もない。 


 仔猫の1日の活動時間は、1~4時間。


 制限時間を過ぎると、眠くなってしまう。


 体力を使い過ぎても、電池切れで眠くなってしまう。


 気持ち良さそうに眠っているところを悪いけど、起きてもらうしかない。


 必中ひっちゅう! 連続猫パンチッ!


 親猫達の顔に、何度も猫パンチをくり出した。


 仔猫のパンチだから、大したダメージはないと思う。


 猫パンチを喰らった親猫達は目を覚まし、大きくあくびをする。


「シロちゃん、どうしたニャー? もう起きたニャー?」


 ぼくは「お腹が空いたから、狩りに連れて行って欲しい」と、おねだりする。


「シロちゃんは、腹ぺこさんなのニャ? じゃあ、一緒に狩りに行くニャ」


「ミャ」


 ふたりは大きく伸びをした後、ぼくを挟んで、三人で仲良く手を繋いだ。


 望み通り、狩りに行けることになって嬉しい。


 今日は、どんな野生生物と出会えるかと、ワクワクしていた。





 昨日と同じように、森の中を歩いていると、何か大きなものを引きずるような音が聞こえてくる。


「……何かいるニャー。ふたりとも、隠れて待つニャー」


 サバトラは小さな声で警告すると、近くに生えていた背の高い木を、素早く登っていった。


 シロブチは黙ってうなづき、ぼくを抱えて、草むらに身を隠す。


 ぼく達は静かに、が姿をあらわすのを待った。   


 しばらくして、サバトラが「登ってこい」と、サインを送ってきた。


 シロブチは、ぼくの首の後ろをくわえて、器用に木を登り始めた。


 されるまで気付かなかったけど、首の後ろを咥えられると、何故かとても安心した。


 猫が首根っこをつままれると大人しくなるのは、リラックスするからか。

   

 大人しく運ばれると、高い木の上に降ろされた。


 仔猫目線だからか、木の上は結構高くて、足がすくんだ。


 枝にしがみついているぼくに、サバトラが小さな声で教えてくれる。


「あれは、ティタノボアニャー。見つからないようにじっとして、立ち去るのを待つニャー」


 ズルリズルリと、地をって現れたのは、巨大なヘビの化物だった。




 ―――――――――――――――――――

Titanoboaティタノボアとは?】


 今から約6000万年くらい前に生息していたと言われている、史上最大のヘビ。


 最大全長12~15m、体重約1135㎏、胴体の最も太い部分の直径は約1m


 絶対強者ぜったいきょうしゃだったけど、寒さに弱かった為、絶滅ぜつめつしたと考えられている。

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