第23話 好奇心は猫をも殺す

 ティタノボアは、長く太い体を大きく左右にくねらせながら、地面をっている。


 文字通り、蛇行だこう


 ズルリズルリとゆっくり進み、たまに立ち止まって、頭を高く上げる。


 周囲をうかがうようにキョロキョロ見回しながら、細く長い舌をチロチロと出し入れしている。


 きっと、獲物えものを探しているんだろう。


 あれだけデカければ、ぼくなんて丸呑まるのみされる。


 いや、成猫だって、余裕で丸吞み出来るに違いない。


 昔、コーンスネークくらいなら、見たことがあるんだけど。


 全長10m以上もある、化物みたいにデッカいヘビは、初めてみた。


 さすがに、このデカさになると、恐怖を覚える。


 あんなのに襲われたら、確実に殺される。


「お願いします! 早くいなくなって下さいっ!」と、懸命けんめいに祈り続けながら、息をひそめていた。


 立ち去ってくれるまでの1分1秒が、とても長く感じられる。


 完全に姿が見えなくなるまで、ぼくも親猫達も一歩も動かなかった。


 やっといなくなってくれて、ぼく達は詰めていた息を、大きく吐き出した。


「ふ~……危なかったニャー」


「怖かったニャ。シロちゃん、大丈夫だったニャ?」


「ミャ~……」


 恐怖と緊張で震えが止まらず、全身の毛が肌に張り付くほど、大量の汗をかいた。  

 

 この世界には、あんな恐ろしい生き物がいるのか。


 ぼく達に気付かず、立ち去ってくれて助かった。


 安心した、その時だった。

 

 遠くで、悲鳴のような鳴き声と走り回るような足音、ヘビ特有のシャーッという威嚇いかくする声が聞こえてきた。


 たぶん、ティタノボアが獲物えものを見つけたんだ。


 大迫力だいはくりょくのティタノボアの狩りを見たい気もするが、命はしい。


「好奇心は、猫をも殺す」という、有名なことわざもあるしな。


 狙われてしまった動物には申し訳ないけど、ティタノボアが狩りをしている間に、逃げなければ。


 親猫達は、ぼくをくわえて木から飛び降り、音もなく着地すると、猛スピードで逃げ出した。


 ぼく達の代わりに襲われた見知らぬ動物さん、ごめんなさい、ありがとう。




 ―――――――――――――――――――

Pantherophisコーン guttatusスネークとは?】


 人懐っこい性格で、毒もない、初めてヘビを飼う人にもオススメのペット用ヘビ。


 全長約1m、体重400~450g、胴体の直径は約3㎝


 白蛇アルビノは縁起が良いとされ、白蛇を信仰している神社で飼われていることもある。 



【好奇心は猫をも殺すとは?】


 イギリスのことわざで、「Cat has nine9つの lives命を持つ.」を、日本語に意訳いやくしたことわざ。


イギリスでは、「猫は9つの命を持っている」と考えられていて、「そんな猫ですら、好奇心が原因で死んでしまうことがある」という意味で使われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る