第24話 無事に帰ってきました

 ティタノボアから、命からがら逃げ延びたぼく達は、集落へ戻ってきた。


「たくさん走って、疲れたニャー……」


のどかわいたニャ……お水を飲みに行きましょうニャ」


 親猫達は、全力疾走ぜんりょくしっそうして逃げ帰ったので、疲れ果てていた。


 ぼくも、緊張と恐怖で汗をびっしょりかいたので、喉がカラカラだ。


 集落の中には、小さな川が流れていて、猫達はそこを水飲み場にしている。


 猫は水浴びをする必要がないし、何かを洗うこともないから、川の水は綺麗だ。


 渇いた喉に、冷たい水が美味しい。


 たっぷり水を飲んだら、ようやく落ち着いた。


 ちょうど、水を飲みに来ていたミケさんが、ぼく達に声をかけてくる。


「おや、サバトラさん。ご家族で、狩りに行かれたのではなかったのにゃ?」


「どうも、ミケさん。実は、ティタノボアがいましてニャー。逃げ帰ってきましたのニャー」


「ティタノボアにゃっ?」


 ティタノボアと聞いて、ミケさんは飛び上がりそうなほど驚いた。


 あれを見たら、誰だって恐怖を覚えるもんな。


 動揺しながら、ミケさんは続ける。


「と、とにかく、シロブチさんもシロちゃんも、みんな無事で何よりにゃ。それで、ティタノボアはどこにいたのにゃ? 集落を襲ってくることはないにゃ?」


「集落からは離れていましたから、襲ってくる危険はないでしょうニャ」


 シロブチの言葉を聞いて、ミケさんはこわばらせていた体から力を抜いた。


「それは、良かったにゃ。みんな、ケガはないかにゃ?」


 ミケさんは恐怖が過ぎ去ると、今度はぼく達の体の心配してくれた。


 言われて、親猫達は自分の体を確かめる。


「ティタノボアを見ただけで、襲われてはいませんニャー」


「逃げる時に、木の枝や葉っぱにひっかかったくらいですニャ」


「どんな小さなケガでも、お医者さんにてもらった方が良いにゃ。シロちゃんは、大丈夫にゃ?」


 ぼくは親猫達に守ってもらっていたから、特にケガはない。


 ただ、ずっと気を張り詰めていたから、気疲れしたくらい。


「大丈夫」と、応えようとした時、睡魔すいまが襲ってきた。


 残念ながら、もう電池切れのようだ。


 ぼくは眠気に耐えられず、その場で眠ってしまった。  

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