第25話 ぽんぽんぺいんぺいん

 空腹で、目が覚めた。


 おなかが、「早く飯をよこせ」と、ぐぅぐぅ鳴いている。


 水しか飲んでいなかったから、当然だ。


 昨日は、ティタノボア騒動で、ごはんどころではなかった。


 仔猫は、疲れすぎたり、強いストレスを受けたりすると、ごはんを食べられなくなることがあるらしい。


 ごはんを食べるにも、体力がいるからだ。


 これは、人間も同じだな。


 体が未熟な仔猫は、特にお腹を壊しやすい。


 どうやらぼくも、自分では気付かないうちに、強いストレスを感じていたらしい。


 ぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいで、ゴロゴロピーちゃんだおなかをこわしている


 らさないうちに、スヤスヤ眠っている親猫の間から抜け出し、集落内にある公共の砂場トイレで用を足した。 


 出すもの全部出して、スッキリげっそりぐったり。


 ピーちゃんのせいで、もともと少ない体力をさらに使ってしまった。


 なんか、急に寒くなってきた気がする。


 日差しはポカポカ温かいのに、風もそよ風くらいしか吹いていないのに。


 どうして、こんなに寒いんだろう。

   

 あれ? ひょっとして、これはヤバいのでは? 

 

 ピーちゃんの時点で、明らかに異常だ。


 しかも、寒気を感じるってことは、絶対病気だ。 


 親猫たちに頼んで、お医者さんへ連れて行ってもらわなきゃ。


 でも、砂場ここからなら、巣穴よりもお医者さんの方が近い。


 こうなったら、自分でお医者さんに行くしかない。


 ぽんぽんぺいんぺいんのせいで、足に力が入らない。


 プルプルと震える足で、お医者さんの方角へ向かってヨロヨロと歩く。


 マズい……この分だと、たどり着く前に力尽きるかもしれない。


 どうしよう……誰か、助けて。


「ミャ~……」


「シロちゃんっ!」


 助けを求めて、か細い声で鳴くと、親猫達が駆け付けて来た。


 巣穴からいなくなったぼくを、探しに来てくれたようだ。


 良かった、助かった。


 ぐったりしたぼくを抱っこしてくれたシロブチに、「ぽんぺんでピーちゃん」だと伝えた。


「大変ニャー! シロちゃんが、病気ニャーッ!」 


「早く、お医者さんへ連れていかなきゃニャッ!」


 親猫達は大慌てで、お医者さんへ向かって走り出した。



―――――――――――――――――――――――――――

【仔猫のピーちゃんには、要注意】


 体が未熟みじゅくな仔猫は、ちょっとしたことで体調を崩しやすい。


 ピーちゃんで体が冷えると、低体温症ていたいおんしょうになる。


 仔猫の低体温症は、命にかかわるので、迷わず病院へ連れて行こう。

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