第26話 お医者さんの診断

 ぐったりしたぼくを抱えて、親猫達はお医者さんの元へ駆け付けた。


「先生、うちのシロちゃんが、大変ニャーッ!」


「先生、早くシロちゃんを助けて下さいニャッ!」


 取り乱す親猫達に、お医者さんは目を丸くして驚いている。


「そんなに慌てて、どうしたんですニャ~? ふたりとも、落ち着いて下さいニャ~」


「これが、落ち着いていられますニャーッ? うちの可愛いシロちゃんが、こんなにぐったりしているんですニャーッ!」


「昨日まであんなに元気だったのに、どうしてニャ……」


 サバトラはイライラしてお医者さんに詰め寄り、シロブチはぼくを抱えて泣いている。


 お医者さんが、なだめようとしているが、ふたりとも落ち着かない。


 ここは、ぼくがなんとかしないと。


「ミャ~……」


 か細い声で、「助けて」と鳴くと、親猫達はハッとなった。


 ふたりともぼくの顔を覗き込み、そっと頭を撫でてくれる。


「シロちゃん、すぐ助けてあげるニャー」  


「今、お医者さんにてもらうからニャ」


 ようやく落ち着きを取り戻したふたりは、お医者さんに向かって頭を下げる。


「取り乱して、すみませんニャー」


「シロちゃんを、どうかお願いしますニャ」


 お医者さんは、ほっとした表情でふたりに優しく話し掛ける。


「では、シロちゃんをここに寝かせて下さいニャ~」


「はいニャ」


 き詰められた枯草の上に、仰向あおむけで寝かされる。


 お医者さんは、ぼくの体を調べながら、親猫達に問診もんしんする。


「昨日、何かありませんでしたかニャ~?」


「家族で、狩りに行きましたニャ。そこで、ティタノボアと会いましたニャ」


「ティタノボアですニャ~ッ? よく、ご無事でしたニャ~?」


「見つからないように隠れて、やり過ごしましたニャー。ティタノボアの姿が見えなくなった後、逃げ帰って来ましたニャー」 


「集落の小川でお水を飲んだ後、シロちゃんは倒れてしまったんですニャ」


「ふむふむ。たぶん、それが原因ですニャ~」


 お医者さんは納得した顔で、動物の毛皮らしきものを、ぼくの体に掛けながら続ける。


「シロちゃんは、いっぱい怖い思いをしたから、具合が悪くなっちゃったみたいですニャ~」


「そうだったんですニャ……」


「体が、だいぶ冷えちゃってますニャ~。体をあっためて、ゆっくり休ませて下さいニャ~」


「はい、分かりましたニャ」

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