第26話 おくすり飲めたね
シロブチが、ぼくを毛皮で包んで抱き上げ、帰ろうとする。
お医者さんは、慌ててシロブチを呼び止める。
「あ、ちょっと待って下さいニャ~。シロちゃんに、お薬を飲ませますニャ~」
「そうなんですニャ? では、お願いしますニャ」
「今、お薬を作りますニャ~」
お医者さんは、近くに生えているヨモギの葉っぱを、十枚ほどちぎった。
おわんのような形をした石の
グチャグチャにつぶし終わると、お医者さんはぼくに器を近付けてくる。
「お薬が出来たニャ~。さぁ、シロちゃん、あ~んするニャ~」
え? それ、飲まなきゃいけないの?
「病気になったら、つぶしたヨモギを飲む」とは、聞いていたけど。
つぶしただけのヨモギを、そのまま飲むのはイヤだ。
実は小さい頃に一度だけ、ヨモギをそのまま食べたことがあるんだよね。
葉っぱの裏側にある細かい毛が、口の中でケバケバして、葉っぱ特有の青臭いエグみが強くて、とても食べられなかった、
おばあちゃんが、「ヨモギは、ゆでて
あの時の味を思い出して、思わず顔をしかめた。
口を開けないぼくを見て、お医者さんが困った顔をする。
「シロちゃん、お薬を飲まないと、病気が治らないニャ~」
「シロちゃん、お薬飲んでニャ」
「シロちゃん、あ~んしてニャー」
三匹の
無理矢理、口を開けさせられて、つぶしたヨモギの汁を飲まされた。
「はい、おわりニャ~。ちゃんとお薬飲めて、えらかったニャ~」
お医者さんは、ニコニコ笑いながら、ぼくの頭を撫でてくれた。
てっきり、つぶしたヨモギを口に押し込まれると思っていたんだけど。
「汁だけ?」と聞くと、お医者さんは答えてくれる。
「仔猫がヨモギを食べると、おなか壊しちゃうニャ~」
仔猫はおなかが弱いから、ヨモギを消化出来ないのかもしれない。
汁だけだったので、そんなにツラくなかった。
でも、口直しに水が飲みたい。
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