第27話 お母さん
「先生、ありがとうございましたニャ」
「お大事にニャ~。具合が悪くなったら、また来てニャ~」
親猫達はお礼を言って、お医者さんのところを後にした。
ぼくは、
「じゃあ、シロちゃんが元気になるように、美味しいお肉を狩ってくるニャー」
「はい、いってらっしゃいニャ」
シロブチはぼくの看病の為、巣穴に戻り、サバトラは狩りへ出掛けた。
ぼくが「水が飲みたい」と言うと、シロブチは途中で小川に寄ってくれた。
本当は、温かい飲み物や常温のスポーツドリンクが良いんだけど。
猫しかいない集落で、温かい飲み物なんてあるはずがない。
おなかかが冷えちゃうけど、小川の水を飲むしかない。
我慢して冷たい水を飲んだら、さらに体が冷えた気がする。
寒くて震えるぼくを、シロブチが抱き締めてくれる。
シロブチの体が、じんわりあったかくて気持ちが良い。
「シロちゃん、今日はあったかくして、ゆっくり寝ましょうニャ」
「ミャ……」
シロブチは巣穴で丸くなり、ぼくの体をすっぽり包んであっためてくれる。
「シロちゃん、寒くないかニャ? 具合が悪くなったら、すぐ言うニャ。早く元気になってニャ」
心配で仕方がないという優しい声に、心まであったかくなる。
こんなに大切にされて、こんなにも愛されている。
これが、親か。
見ためが猫だから、シロブチとサバトラがぼくの親だとは、どうしても思えなかった。
でも今なら、ふたりが親だと思える。
ようやくぼくの中で、シロブチが「ぼくのお母さん」なんだと、飲み込めた。
ゴロゴロと喉を鳴らして、シロブチにスリスリして甘える。
今なら、言えそうな気がする。
「……お母さん」
「シロちゃんが、初めてお母さんって呼んでくれたニャ……ッ!」
シロブチが感激した様子で、喉をゴロゴロ鳴らした。
猫のゴロゴロ音は、癒される。
可愛くて優しい猫が、ぼくの親だなんて、なんて幸せなんだろう。
これからはシロブチじゃなくて、お母さんと呼ぼう。
「お母さんお母さん」
「シロちゃんシロちゃん」
ふたりでゴロゴロ喉を鳴らしながら、お互いを呼び続けた。
お母さんに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます