第29話 兄弟の行方


 目が覚めると、寒気とぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいは、だいぶマシになっていた。


 お母さんとお父さんが、ぼくをサンドウィッチして、あっため続けてくれたおかげだろう。


 ゴロゴロピーちゃんおなかをこわしているは、まだ治っていないから、漏らす前に砂場トイレで用を足した。


 昨日はずっと寝ていたのに、まだ体力が戻り切っていない。


 今日も、大人しく寝ていた方が良さそうだ。


 何も食べてないから、おなかがいて、力も出ないんだろう。


 でも、ゴロゴロピーちゃんのおなかをこわしている時に、野生動物の生肉は絶対食べちゃダメだと思う。


 野生動物には、どんな寄生虫や雑菌がいるか、分からない。


 ピーちゃんがひどい時は、何も食べないで、胃腸を休めた方が良いとも言うし。


 ぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいが治るまでは、安静あんせいにしておこう。


 砂場から巣穴へ戻り、気持ち良さそうに眠っている、お父さんとお母さんの間にもぐりこむ。

  

 収まりの良いところに身を落ちつけて、あったかくて柔らかい猫毛にもれる。


 お母さんに抱き着いて、スリスリして、ゴロゴロ喉を鳴らす。


 ああ、なんて幸せなんだろう。


 猫アレルギーで出来なかった猫吸いが、いつでも出来る幸せ。


 猫に生まれ変わったら、色々と大変なことも多いけど、「猫可愛い」で全て許せてしまう。


 やっぱり、可愛いは正義。


 そんなことを考えながら、ウトウトしていると、ふいに気付く。


 あれ? そういえば、ぼくの兄弟は?


 今まで、なんで気付かなかったんだろう?


 猫って確か、1回の出産で2~6匹産むはず。


 普通なら、おない年の兄弟がいるはずなのに。


 ぼく以外の仔猫がいないのは、なんでだろう?


 もしかして、ぼく以外の兄弟は、全員死んだのだろうか。


 野良の仔猫の生存率せいぞんりつは、とても低いと言われている。


 死因は、病気、ケガ、野生動物に襲われるなど。


 お父さんとお母さんが、ぼくをとても大事にしてくれているのは、ぼくが最後のひとりだからかもしれない。


 お父さんとお母さんが起きたら、聞いてみよう。 



―――――――――――――――――――

【野良の仔猫の生存率とは?】


 野良猫は、とても厳しい環境かんきょうで生きている。


 いつ、ごはんが食べられるか分からないし、病気にもかかりやすい。


 危険がいっぱいで、ストレスもハンパなく、いつも睡眠不足。


 成猫おとなになれるのは、20%前後と言われている。


 


 

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