第29話 旅するお医者さん
目を覚ましたお父さんとお母さんに、「ぼくに、兄弟はいるのか?」と、聞いてみた。
「シロちゃんの兄弟は、みんな死んじゃったニャ……」
お母さんは、悲しそうな顔で打ち明けてくれた。
やっぱり、ぼくが最後のひとりだったのか。
死因は、病気? それとも事故?
「みんな、体が弱くて、病気になって死んじゃったニャ」
「生まれてすぐ、死んじゃった子もいたニャー」
体が弱いと気付いた時、お医者さんには連れて行ったのか?
「もちろん、すぐお医者さんに連れて行って、
この集落にいるお医者さんの医療技術は、
ヨモギは万能薬だけど、軽いケガや病気しか治せない。
ほとんどのケガや病気は、寝て治すしかない。
生まれつき体が弱かったり、生まれつき重い病気を持っていたら、お手上げだ。
手術でしか治らない病気だったら、何も出来ずに、ただ死ぬのを待つだけ。
亡くなった兄弟達は、とても苦しかっただろう。
お父さんもお母さんも、我が子達を失ってどれだけ辛かっただろう。
兄弟がいない理由が分かって、とても悲しくて、とても悔しい気持ちになった。
ここに、腕の良い獣医さんがいたら、助けられたかもしれないのに。
この世界の医療技術は、どうなっているのだろうか。
もしかしたらこの世界には、高い医療技術を持つお医者さんか、医療魔法が使える魔法使いがいるかもしれない。
そういえば、この世界では魔法を使えるのかな。
集落の猫達が、魔法らしきものを使っているところは、見たことがないけど。
もし、魔法を使える世界だとしたら、使えるようになりたい。
長老のミケさんの話によると、森の中には、ここ以外にもいくつも集落があるらしい。
他の集落には、高い技術を持つお医者さんや、魔法使いがいるかもしれない。
見つけたら、ぜひ、弟子入りして、医療を教えてもらいたい。
将来は、世界中を旅しながら、ケガや病気で苦しんでいる猫を助ける、旅するお医者さんになりたいな。
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