第18話 お父さんとお母さん
シロブチとサバトラに挟まれて、三人で仲良くおててつないで、森へ入る。
肉球のプニプニした触感が嬉しくて、思わず顔がニヤニヤしてしまう。
肉球って、なんでこんなに気持ちが良いんだろう。
まんまるで可愛いし、ずっとプニプニしていられるし、めっちゃ癒される。
プニプニしていると、シロブチが笑って、ぼくの肉球をプニプニしてくる。
「シロちゃんの肉球は、ちっちゃくて可愛いニャ」
そんなたわいのない会話をしながら、森の中を歩いて行く。
森の中はいつも、あちこちから野生動物の鳴き声が聞こえている。
ギャアギャアという鳴き声は、鳥だろうか。
風に吹かれて、草木もざわめいている。
どこから、野生生物が飛び出して来るか分からなくて、森に入ってからずっと緊張しっぱなしだ。
近くの草むらが動く度に、ビクッと体が大きく跳ねてしまう。
ビクビクするぼくを、サバトラが優しく笑いながら、なだめてくる。
「そんなに怖がらなくても、大丈夫ニャー。何があっても、お父さんとお母さんが、シロちゃんを守るニャー」
お父さんとお母さん。
言われてみれば、そうなんだよな。
ぼくはまだ、ふたりを「お父さん」「お母さん」と、呼んだことがない。
猫に生まれ変わったけど、精神は人間のままなんだよね。
ある日突然、「今日からこの猫達が、あなたの両親ですっ!」と言われても、「はい、そうですか」とはならないだろ。
だから、ふたりが「自分の両親」と思えないんだ。
でも今は、ぼくの両親。
今もこうして、ふたりから愛され、守られている。
ちょっと目を離すと、すぐどっか行っちゃう
今は実感ないけど、そのうち
ギュッと、ふたりの手を握り締めると、両親は嬉しそうに笑って握り返してくれた。
家族の微笑ましいやりとりに、胸がほっこりとあったかくなる。
しかし、家族で仲良くおさんぽ気分は、そこまでだった。
数十m前方にある草むらが、ガサガサと大きな音を立てて揺れる。
あきらかに、何かが出てきそうな気配を感じた。
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