第20話 狩れない生物

 草むらから、のっそりと姿を現したのは、ワニとイノシシを掛け合わせたかのような見た目の大きな動物だった。


 後頭部こうとうぶからしっぽにかけて、馬みたいな「たてがみ」が生えている。


 そいつを見た直後、サバトラとシロブチは揃って絶叫を上げた。


「アンドリューサルクスニャーッ!」


 ふたりはぼくを抱えて、大急ぎでその場から逃げ出した。


 しばらく逃げ続けて、どうにか、さっきの動物を振り切ることが出来たようだ。


 周りを見回しても、追手おってがいないことを確認して、ふたりは安心した顔で大きく息を吐く。


「ふ~……逃げ切れたみたいニャー」


「シロちゃん、覚えておくニャ。アンドリューサルクスは、危ないから絶対に近付いちゃダメニャ」


 あれは、猫が狩れない野生生物なのか。


 ふたりがこれほど恐れるということは、たぶん、こちらが狩られる側。


 自分より強い相手と出会ったら、逃げることも大事。


 危険な生き物と出会ったら、すぐに逃げる。


 それが、生きていく知恵。


 きっと、アイツ以外にも、狩れない生物がいるに違いない。


 他にも危険生物がいるに違いないから、しっかり覚えておかないと。 


 アンドリューサルクスから無事に逃げびた後は、これといって危険生物と出会うことはなかった。


 途中で、木の実を食べていたガストルニス(毛深いダチョウみたいな飛べない鳥)を見つけて、サバトラが素早すばや仕留しとめた。


 ガストルニスなら、今朝もサビさんに食べさせてもらった。 


 無事に獲物えものを狩れて、サバトラは満足げな顔をしている。


「よし、ガストルニスがれたから、みんな食べるニャー」


「いただきますニャ」


「ミャ」


 ガストルニスを、その場で美味しく食べた。


 とれたてだから、肉が柔らかくて食べやすかった。


 残った肉は、お土産として集落へお持ち帰りした。






 ―――――――――――――――――――――――――――――――

Andrewsarchusアンドリューサルクスとは?】


 今から3600万年くらい前に生息していたと言われている、史上最大の陸上肉食獣。


 推定体長382cm、体重180~450kg


 ワニのような大きな口を持ち、恐ろしい力で獲物えものを食いちぎっていた、と考えられている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る