第18話 迷子の反省

「シロちゃん! やっと見つけたニャッ!」


 聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、シロブチが息を切らせて走ってくるのが見えた。


 駆け寄ってくると、ぼくを抱き締めた。


「シロちゃん、またイチモツの木に、登ろうとしたニャッ?」


 シロブチの態度から、かなり心配を掛けたと分かった。


 そりゃ、仔猫が行方不明になったら、めちゃくちゃ心配するか。


 シロブチはぼくを抱っこしたまま、ミケさんに謝る。


「またうちの子が、ご迷惑をお掛けして、すみませんニャ」


「いやいや、今日はシロちゃんは木登りしてないにゃ。それに、成猫おとなになるまで、イチモツの木には登らないと約束してくれたにゃ」


「それなら、良かったですニャ。じゃあ、ここで何をニャ?」


「なぁに、ちと、ワシのむかしばなしを聞かせただけにゃ」


「おはなしを聞かせて下さって、ありがとうございましたニャ」


 ミケさんがほがらかに笑うと、シロブチが安心したとばかりに、大きく息を吐いた。


 ミケさんとの話が終わると、シロブチはぼくを叱ってくる。


「シロちゃん! もう、勝手にどっか行っちゃメッ、ニャッ!」  


「ミャ~……」


 いきなりいなくなったのは悪かったと、反省してます。


 大きな木に勝手に登って落ちた、1日しか経っていないし昨日の今日だし。 


 でも、ずっと寝てるのもひまでさ。


 集落の中なら安全だし、大丈夫だと思ったんだよね。


 そうは言っても、親から見れば迷子。


 これからは、目の届く範囲で行動するので、許して下さい。


 しばらくすると、サバトラが駆け寄ってくる。


「シロちゃん、見つかったニャー? 良かったニャー……」


 サバトラも、ぼくを探してくれていたようだ。


 心配掛けて、ホントすみません。


 サバトラが、ぼくの頭を撫で撫でしながら、ニッコリ笑う。


「安心したら、お腹が空いたニャー。シロちゃんも、一緒に狩りに行くかニャー?」


「ミャ!」


 ぼくが元気よく返事をすると、シロブチが真剣な顔で言い聞かせてくる。


「じゃあ、みんなで行きましょうニャ。シロちゃん、危ないから絶対離れちゃメッニャ」


「ミャ」


 いくらぼくでも、野生生物がウヨウヨいる狩場かりばで、勝手な行動はしない。


 小さな仔猫じゃ、こっちが狩られる。


 よし、今日はぼくも何か狩れるように、頑張るぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る