第17話 当面の目標

 長老ちょうろうのミケさんなら、色んなことを知っているかもしれない。


「ここはどこなのか?」を、聞いてみる。


「ここは、森の中にある集落しゅうらくにゃ。森には、色んな生き物がたくさんいるにゃ」


 お医者さんも、似たようなことを言っていた。


 目に見える情報は、もう知っている。


 ぼくが知りたいのは、見えない情報。


 この集落を作ったのは、誰なのか? 


「誰が作ったのかは、知らないにゃ。何年も前に、何匹かの猫が集まって、ここに集落を作ったと聞いているにゃ」 


 いくら長老でも、詳しくは知らないか。


 集落に、名前はあるのか?


「名前はないにゃ。名前を付けるとしたら、集落のまんなかに、大きなイチモツの木があるから、『イチモツ村』かにゃ?」


 最悪だ! そんな名前なら、付けない方がマシだっ!


 地名は、その土地の目印となるものランドマークから付けることが多い。 


 青々あおあおとした森があったから「青森県」


 富士山が見えるから「富士見町ふじみちょう」といった感じだ。


 それはさておき、ミケさんは森の外へ出たことはあるのか?


「ワシも若い頃、広い世界にあこがれて、旅に出たことがあるにゃ」


 おおっ、ミケさんは森の外に出たことがあったのか。


 これは、期待きたい出来そう。


「森はとっても広くて、他にもいくつも集落があったにゃ」

  

 猫は世界中どこにでもいるから、集落はたくさんありそうな気がする。


「森を出るには、数日かかったにゃ。森の外は、広い草原があって、遠くには大きな山があったにゃ」


 ほうほう、森の外には草原が広がっていたのか。


 それで? 


「それだけにゃ」


 それだけって、どういうこと?


「あとは、特に何もなかったにゃ」


 何もないってことは、大自然以外には、村も街もなかったってことか。


 ミケさんからは、これ以上のことは何も聞き出せなかった。


 あとは、自分の目で確かめるしかない。


 ぼくも成猫おとなになったら、あてもなくのんびりと旅してみたい。


 異世界放浪旅ほうろうたびは、やっぱりあこがれる。


 とりあえず、今出来ることは、狩りと木登りの練習くらいかな。


 今からしっかりきたえて、ひとり旅が出来る体を作るんだ!

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