第110話 猫は魚が好き

 波と追いかけっこをして遊び疲れたので、3匹で身を寄せ合ってお昼寝。


 寝ている間にしおちて、気が付いたら海の中でした……。


 なんてことが起こらないように、砂浜すなはまから少しはなれた草原まで移動した。


 聞こえてくる波の音。


 心地良ここちよ海風うみかぜ


 ぽかぽか陽気ようきで、お昼寝日和びより


 お父さんとお母さんにはさまれて、ふわふわもふもふの猫毛にもれれば、いつもより眠れそうな気がする。


 眠るって、なんて気持ちが良いんだろう。



 波の音が気持ち良くて、寝すぎてしまったようだ。


 気が付いたら、空の色が茜色あかねいろに染まっていた。


 夕日ゆうひが沈んでいく海も、夕焼ゆうやけ色に、キラキラとかがやいている。


 このまま、太陽がしずむまで、ずっとながめていたいと思わせる美しさ。


 だけど、夜が来る前に、食べる物を探さないと。


 海には、海洋かいよう生物がいっぱいいる。


 泳ぐことが出来れば、魚を捕れるかもしれない。


 と、思ったけど、実は、猫に魚は食べさせない方がいいんだよね。


 日本では、「猫は魚が好き」というイメージがあるけど。


 猫は本来、肉食動物。


 海洋かいよう生物は、食べられないものが多い。


 青魚あおざかな、イカ、タコ、貝類、甲殻類こうかくるい(カニやエビ)などは、猫にとって毒となる成分がふくまれているらしい。


 猫が大好きなカツオやマグロも、キャットフード用に加熱処理かねつしょりされたものじゃないと危険。


 魚は小骨こぼねが多く、のどさる可能性も高い。


 せっかく海に来たのに、猫になったら、海のさちが食べられなくなるなんて……。


 人間だった頃に、もっとたくさん食べておけば良かった。


 岩場に、フナムシっぽい虫がいるけど、これも甲殻類こうかくるいなので、食べられない。


 お父さんがらえて食べようとしていたので、あわてて止める。


「ミャーッ!」


 それ、毒があるから、食べちゃダメーッ!


「これ、食べちゃダメなのニャー? 美味しそうなのにニャー……」


 お父さんは残念そうに、フナムシを元の場所へ戻した。


 ふ~……やれやれ、食べる前に気付いて良かった。


 海のさちが食べられないとなれば、あと食べられるのは、海鳥うみどりくらいか。


 見れば、岩場には、ペンギンのような鳥が群れている。


「あれは、コペプテリクスニャー。みんなで、そ~っと近付いてって狩るニャー」


 お父さんの指示のもと、ぼく達3匹は、そろ~りそろ~りと近付いて、一気におそいかかった。


 コペプテリクス達は驚いて、海へ飛び込んで逃げて行く。


 海中かいちゅうへ逃げたヤツは、あきらめるしかない。


 結果的に、コペプテリクスが1匹だけ狩れたので、家族で分け合って美味しくいただいた。


 鶏肉とりにくみたいな味がして、とても美味しかったです。


――――――――――――――


Copepteryxコペプテリクスとは?】


 今から約4100万年前~1500万年前に生息していたと言われている、海鳥うみどり祖先そせん


 水鳥みたいな長い首が付いた、ペンギンのような見た目をしている、飛べない鳥。


 全長約2m、体重は不明。

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