第111話 行きたいところ

 お父さんとお母さんと3匹で、仲良くおててつないで、白い砂浜すなはまをブラブラ歩く。


 足がしずみ込むから、ちょっと歩きにくいけど、砂の感触かんしょくは気持ち良い。


 お散歩しながら、お母さんが首をかしげて聞いてくる。

 

「シロちゃん、次はどこへ行くニャ?」


「ミャ」


 ぼくは、少し考えてから、「まだ決めてない」と、答えた。


 最初の目標は、森を出る。


 第二目標は、山に着く。


 第三目標は、山を越える。


 最終目標は、旅をしながら、この世界の猫達に薬草の使い方を教えて、1匹でも多くの猫を救うこと。


 最終目標までは、まだまだ遠い。


 山の反対側には、海があった。


 さて、次はどこへ行こうか?


 海の向こうに、陸地りくちらしきものが、小さく見えている。


 泳いで行ける、距離きょりだろうか。


 水が苦手な猫が多いけど、たまに水が好きで、泳げる猫もいる。


 猫が泳ぐ時は、犬かきみたいに泳ぐんだよ。


 ぼくは、猫になってから、何度も川に入ったことはあるけれど、泳いだことはない。


 たぶん、泳ごうと思えば、泳げると思う。


 でも、向こう岸まで海を泳いで渡るなんて、たぶん無理だ。


 潮の流れに流されて、おぼれてしまう可能性が高い。


 それに、あそこまで、どのくらい距離があるかも分からない。


 近くに見えても、実際は、めちゃくちゃ遠いかもしれない。


 仮に、向こう岸まで辿たどり着けたとしても、何があるか分からない。


 うん、海を渡るのは、やめよう。


 このまま、海岸線かいがんせんを歩いて行ったら、何があるのだろう?


「ミャ」


 とりあえず、行けるところまで行ってみたい。


「分かったニャー」


「私達は、シロちゃんにどこまでもついて行くニャ」


 お父さんとお母さんは、ニッコリ笑って、ぼくのワガママを受け入れてくれた。


「ミャ!」


 お父さんとお母さん、ありがとう!


 ふたりの優しさがうれしくて、ぼくもニッコリと笑い返した。


 そういえば、ふたりは行きたいところはないのだろうか。


 聞いても、「シロちゃんの行きたいところが、私達の行きたいところ」と、答えると思うけど。


 もしかしたら、イチモツの集落しゅうらくへ帰りたいかもしれない。


 ぼくも、イチモツの集落しゅうらくこいしい。


 イチモツの集落しゅうらくのみんなに会いたい。 


 海岸線かいがんせんはしっこまで行っても、何もなかったら、イチモツの集落しゅうらくへ帰ろう。


 帰る時は、来た道をそのまま戻るんじゃなくて、山を反対回りして帰ろう。


 イチモツの集落しゅうらくへ帰ったら、長老のミケさんにお土産話みやげばなしを、たくさん話すんだ。

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