第70話 新しい生活

 新しい集落での生活が始まった。


 ほとんどの猫達が、のんびりとお昼寝をしている。


 移動疲れを、いやしているのかもしれない。


 ぼくも移動中、13匹の猫達の健康管理けんこうかんりで、気を張り詰めていて疲れた。


 とにかく、ゆっくりと眠りたい。


 可愛い猫達と一緒に、身を寄せ合って眠る幸せ。


 幸せそうに眠る猫の寝顔って、天使だよね。


 可愛すぎて、ずっと見ていられる。


 でもたまに、寝顔がめちゃくちゃ怖い猫もいる。


 白目剥しろめむいて、口が半開きで、舌をダラリと出して寝ている。

 

 真夜中まよなかに見たら、泣いて逃げるレベル。


 いくら猫好きでも、あの寝顔はちょっと引くわ。



 たっぷり寝て、体力が回復したところで、周辺調査しゅうへんちょうさねて、狩りへ行く。


 知らない土地で、危険生物と出会うかもしれないから、狩りが得意な猫達に声をかける。


「ミャ!」


「シロちゃん、一緒に狩りに行くニャー」


「ちっちゃい仔猫一匹で、行かせられないニャニャ」

 

「仔猫のお医者さんが行くなら、ボクも行くニャオ」


「みんなの為に、いっぱい狩るニャ~ン」   

 

 狩りが大好きなお父さんを始め、3匹の猫がついて来てくれることになった。


 ぼく達は、周辺調査しゅうへんちょうさをしながら、狩れそうな草食動物を探す。


 調べたところ、この近くには毒虫はいないし、毒草も生えていないようだ。


 今のところ、危険生物とも出会っていない。


 でも、ここが猫達にとって安全な場所であると、確信かくしんが持てるまで、しっかり調べないと。


 出来れば、薬草も見つかれば良いんだけど。  


 しばらく歩いていると、クマみたいな大きな動物がいた。


 思わず逃げそうになると、お父さんが声をひそめて、教えてくれる。


「シロちゃん、良く見るニャー。あれは、ディプロトドンニャー。おっきいけど、狩れるニャー」


 良く見れば、クマとは違う。


 クマサイズのウォンバットだ。


 他の猫達は、いつでも飛び出せるように狩りの体勢たいせいになっている。


「みんな、行くニャーッ!」


 お父さんのかけ声を合図に、ぼくを含めた5匹の猫がディプロトドンへ飛び掛かった。


 ディプロトドンは、必死に暴れるけど、ぼく達は噛みついて離れない。


 ディプロトドンは大きいので苦戦したが、時間をかければ、仕留しとめられた。


「やったやった」と喜び合い、みんなでディプロトドンを集落へ持ち帰った。





 ――――――――――――――――

Diprotodonディプロトドンとは?】


 今から160万年前くらいに生息していたといわれている、ウォンバットの祖先そせん


 大きさ以外は、ウォンバットとほとんど同じ。


 体長約4m、体重約2800~3400kg



Vombatusウォンバットとは?】


 主に、オーストラリアに生息している有袋類ゆうたいるい(コアラの仲間)。


 耳がちっちゃいコアラみたいな顔をしていて、植物の葉や根を食べる。


 動物園で飼育されているウォンバットは、甘えんぼで、とってもさびしがり屋さん。


 新型コロナウイルス感染症で、動物園にお客さんが来なくなったら、さびしさが原因で鬱病うつびょうになった。


 人間に甘えることで寿命じゅみょうびる、不思議な生き物。


 体長約90~115cm、体重約22~39kg

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