第68話 安息の地を求めて

 新しい集落しゅうらくの土地探しは、意外いがいむずかしい。  


 猫達が安心してらせる環境かんきょうじゃないと、集落しゅうらくかまえることは出来ない。


 イチモツの集落しゅうらくを作った猫達は、何を基準きじゅんにあの場所を選んだのかな?


 単純に、「イチモツの木が、森の中でも目印になる巨木だったから」かもしれないけど。


 集落しゅうらく周辺しゅうへんに、危険生物は少なかった気がする。


走査そうさ」しなかったけど、毒を持つ動植物どうしょくぶつもいなかったと思う。


 猫達を守るように大きな岩壁いわかべがあって、そこに猫達の巣穴すあながあった。


 集落内しゅうらくないには、水飲み場となる綺麗きれい小川おがわが流れていた。


 万能薬のヨモギがいっぱいえていて、茶トラ先生もいた。


 そういえば、イヌノフグリの集落しゅうらくにも、今連れている猫達の中にも、お医者さんはいなかった。

 

 もしかしたら、お医者さんがいる集落しゅうらくの方が珍しいのかもしれない。 

 

 イチモツの集落しゅうらくには、猫達が安心して暮らせる環境かんきょうととのっていた。


 今更いまさらながら、イチモツの集落は、かなりめぐまれていたんじゃないかと、あらためて思う。


 イチモツの集落しゅうらくくらい、好条件こうじょうけんの土地を探すのは、難しいかもしれない。


 集落しゅうらくかまえる条件じょうけんとしては、まず、いつでも新鮮しんせんな水が飲める綺麗きれいな川があること。


 猫は特に、腎臓じんぞう胃腸いちょう系の病気にかかりやすいと、言われている。


 毎日、新鮮しんせんな水をたっぷり飲むことで、病気を予防出来るそうだ。 


 次に、危険生物や毒虫などの縄張なわばりをけること。 


 ここにいる猫達は、トマークトゥス(オオカミ)や毒虫におそわれたから、その恐怖は良く知っているはずだ。


 危険生物の縄張なわばりかどうかは、実際に森の中に入って調べるしかない。


 ぼくが「森に入る」というと、成猫おとな達が心配してついて来てくれる。


「ミャ」


「シロちゃん、森に入るなら、一緒に行くニャー!」


「仔猫のお医者さんは、ボク達が守るニャ~ン」


 周辺調査しゅうへんそうさで森に入る時は、みんなから守ってもらっている。


 ぼくは、年齢的には立派な成猫おとななんだけど、見た目は生後3ヶ月くらいの小さな仔猫。


 子供扱いは、もう慣れた。


 調査中ちょうさちゅうに、狩れそうな草食動物がいれば狩り、河原かわらで待っている猫達へのお土産みやげにする。


 いつまでも移動し続ける生活は、ケガをしている猫達にはキツいだろう。


 猫達が落ち着いて暮らせる土地が、早く見つかれば良いな。

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