第67話 11ぴきのねこ

 ぼく達家族は、11匹の猫達を引き連れて、新しい土地を探して大移動中。


 トマークトゥス(オオカミ)のれに襲われた集落しゅうらくは、ここより川上かわかみにあったらしい。


 なので、川下かわしもへ向かうことにした。


 毒虫が好む植物が生えている森をけて、河原かわらを歩いて行く。


 のどいたら、川の水を飲んで休憩きゅうけいする。


 おなかが空いたら、川の水を飲みに来たシカやウマなどの草食動物を狩る。


 草食動物が水辺みずべへ近付いたら、猫達が一斉いっせいに飛びかかり、逃げる間もなく仕留しとめる。

  

 水を飲みに来た草食動物も、猫が14匹もいるとは、思わなかったに違いない。


 たくさんの猫達に襲われた草食動物にとっては、恐怖しかなかっただろう。


 可哀想かわいそうだけど、これが弱肉強食じゃくにくきょうしょく。 


 仕留しとめた草食動物は、みんなで分け合って美味しく食べた。


 ケガした猫達を運んでいるので、移動速度はとても遅い。


 でも、急ぐ旅でもないし、時間ならいくらでもある。


 眠くなったら、日向ぼっこしながらお昼寝をする。


 雨が降ったら、雨風がしのげる場所を探して、みんなで身を寄せ合って温め合う。


 まるで、移動民族ロマみたいだ。


 これからも、集落をかまえずに、狩りをしながら移動し続けるってのは、どうだろうか?


 さっそく、集落のおさに、提案ていあんしてみた。


「悪くない考えナォ。みんな一緒なら、きっとどんな困難こんなんも乗り越えられるナォ」


 集落のおさは、笑顔でうなづいてくれた。    


 しかし、数匹の猫達は、不安そうな顔をしている。


「ずっと移動し続けるニャニャ? それはちょっと心配ニャニャ」


「ケガしている猫もいるから、落ち着ける場所に集落を作った方が良いニャ~ン」


 当然、反対意見は出ると思っていた。


 今まで集落を作るのが当たり前だったのに、いきなり「移動民族になれ」と言われても困るよな。


 移動民族になるかどうかは、急いで決める問題でもない。


 しばらくは、当初の予定通り、みんなが安心して暮らせる場所を探そう。


 落ち着いて暮らせる場所が見つからなかった時に、また改めて話し合おう。



  

 ――――――――――――――――

Romaろまとは?】


 牧畜ほうちく以外を生業なりわい(生きる為の仕事)とする、移動型民族のこと。


 昔は「Gypsyジプシー」と呼んでいたけど、現代日本では「差別用語さべつようご」「放送禁止用語ほうそうきんしようご」となっている。


 放送業界ほうそうぎょうかいでは、「ジプシー」→「ロマ」と言いえられる。


 ヤギやヒツジなどの家畜かちくを連れて、季節ごとに場所を変える移動型民族は、遊牧民ゆうぼくみんと呼ぶ。

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