第66話 土地を追われた猫達

 調査ちょうさの結果、集落しゅうらくの周りには、毒虫がいっぱいいることが分かった。


 集落へ戻って、今度は集落の猫達に、話を聞いてみる。


「ミャ?」


 皆さんは、毒虫に刺されたことがありますか? 


 質問すると、猫達は「よくぞ聞いてくれた」とばかりに、口々くちぐちに話し始める。


「集落を出ると、いつも刺されるニャニャ」


「気が付いたら刺されてて、かゆくて痛くて、仕方ないニャオ」


「これじゃ、狩りも出来ないニャ~ン。なんとかならないニャ~ン?」


 集落の猫達は全員、毒虫の被害ひがいっているようだ。


 今のところ、毒虫に刺されて死んだ猫はいないみたいだけど。


 ずっとここにい続けたら、いつか、毒虫の毒で死んでしまうかもしれない。


 続いて、集落のおさに話を聞いてみることにした。


「ミャ」


 集落の猫達は、毒虫に刺されて大変な思いをしています。


 この集落は、昔から毒虫の被害ひがいがあったのですか?


「我々は最近、ここに来たばかりなのナォ」


 え? 最近?


「前にんでいた集落が、トマークトゥスのれにおそわれて、みんなでここまで逃げてきたナォ」


 トマークトゥス?


 また、知らない名前が出てきた。


 集落を捨てて逃げ出すほどとは、どれほど危険な生き物なんだろう?


 ティタノボア(全長15mの巨大ヘビ)みたいな、ヤバイヤツかもしれない。


「ミャ」


 せっかく、集落を捨てて生きびたのに、ここにいたら、毒虫に殺されかねませんよ。


 もし、この場所に思い入れがないなら、すぐに別の場所に移動するべきです。


 そう助言じょげんすると、集落のおさは深々とため息を吐き出して、大きくうなづく。


「みんなの命には、えられないナォ」


 ぼくの説得せっとくにより、集落の猫達は、毒虫だらけの集落から別の土地へお引っ越しすることになった。


 小さな集落なので、猫は10匹ちょっとしかいない。


 猫だから、荷物はないので、思い立ったらすぐ旅立てる。


 ケガや毒虫の毒で動けない猫は、みんなで交代して運ぶ。


 集落の猫達の新しい土地が見つかるまで、ぼく達家族も一緒に旅をすることになった。





――――――――――――――――

Tomarctusトマークトゥスとは?】


 今から2300万年~1600万年前に生息していたといわれている、オオカミの祖先。


 現在のオオカミとほぼ同じ、体長約150cm、体高約90cm、体重約50kg


 オオカミなので、肉食。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る